地面と建物の縁を切り、大地震の時だけ足元が滑って地震力をかわす「基礎滑り構法」の開発が進んでいる。安価に継続使用性を高める試みだ。世界最大規模の試験体を加振する公開実験で、その減災効果が確認された。
阪神大震災を再現した揺れで、10階建て鉄筋コンクリート(RC)造の試験体がよじれるように揺れた。大きく変形しそうになったところで、取材席から向かって右側の下端部分が一瞬だけ浮き上がった〔写真1、2〕。
1分程度で終了した加振の後、浮いた下端を見ると、試験体は当初の位置から少しだけずれていた。
2018年12月21日、防災科学技術研究所(防災科研)・兵庫耐震工学研究センター(兵庫県三木市)の3次元振動実験施設(通称、E-ディフェンス)で実施された公開実験だ。試験体は集合住宅をモデル化したもので、高さ27.45m、重さ約930トン。振動実験の試験体としては世界最大規模となる。
試験体の短手方向は純フレーム構造、長手方向は1階から7階に連層耐震壁を持つフレーム構造だ。現行の建築基準法に沿って構造計算を実施した。
一般的なRC造と異なるのは基礎形式。フラットなRC基礎(滑り基礎)の上に、鋳鉄製の「間接基礎滑り支承」を取り付けた上部構造が乗っている〔図1〕。
実験後の速報では、試験体が浮いたりずれたりした結果、「基礎を固定した場合に比べて最大層間変形角が3分の2から2分の1程度に抑えられたと考えられる」(姜在道(カンジェド)防災科研・兵庫耐震工学研究センター特別研究員)という〔図2〕。また加振で試験体の位置は最大24cmずれた。最大30cm程度の移動が生じると想定していたが、その範囲に収まった。