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復興住宅の渡り廊下脱落

 21年2月末時点、建物倒壊などの被害は報告されていないが、全壊判定は出ている。その1例が震度6弱が観測された福島市に立つ6階建てRC造の福島市営住宅中央団地7号棟だ。1階ピロティ部分の複数の柱が破損、住民は避難した〔写真3〕。

〔写真3〕ピロティの柱が折れて「全壊」
〔写真3〕ピロティの柱が折れて「全壊」
柱の被害により「全壊」と判定された福島市営住宅中央団地7号棟。RC柱の鉄筋が露出、ブルーシートで養生していた(写真:日経アーキテクチュア)
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 震度5強が観測された仙台市では、高層の集合住宅であわや大惨事という事故も起こっていた。市が整備した14階建てRC造の災害復興住宅「あすと長町第二市営住宅」で、最上階の渡り廊下が脱落、住民1人が軽傷を負った〔写真4〕。

〔写真4〕14階の渡り廊下が脱落
〔写真4〕14階の渡り廊下が脱落
仙台市の「あすと長町第二市営住宅」では、最上階に当たる14階の渡り廊下が脱落した。脱落したのは約1.8m四方の板状のアルミニウム製部材だ。建物はJR長町駅近くの再開発地域で市が公募買い取り方式により整備。2015年に完成した(写真:池谷 和浩)
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 事故があったのは南棟と北棟を結ぶ共用廊下。仙台市市営住宅管理課によると、事故が起こったのは2月13日の地震発生から翌14日午前1時20分ごろまでの間という。市は復旧とともに、事故状況や脱落原因などの詳細を調査中だ。

 市は日経アーキテクチュアの取材に対し、次のようにメールで回答した。「他の渡り廊下では部材の変形など異常がないことを確認した。負傷された方が出たことを深く受け止め、改めて安全対策の観点に立って、適切かつ適正な施設管理に努めたい」(市営住宅管理課)

 現地取材ではこの他、マンションやオフィスビル、ホテルなど中高層建築物の外壁被害を複数確認した〔写真56〕。各自治体における罹災(りさい)証明申請は始まったばかりで、民間建築物を含めた詳細な被害の状況は2月末時点でまだ判明していない。

〔写真5〕東日本大震災の補修痕か
〔写真5〕東日本大震災の補修痕か
福島市に立つ14階建てマンションのタイル剥落痕。入り隅のタイルは上層まで剥がれ落ちていた。露出した鉄筋にはさびた部分があった。近隣住民によるとこの建物は東日本大震災でもタイルが剥落し、補修していたという(写真:池谷 和浩)
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〔写真6〕外壁一面にせん断破壊痕が広がる
〔写真6〕外壁一面にせん断破壊痕が広がる
郡山市中心街を東西に走る幹線道路「さくら通り」に面したオフィスビル。道路に面する外装材が広範にせん断破壊していた。付近ではホテルなど複数の中高層建築物で外壁被害が生じていた(写真:日経アーキテクチュア)
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 公共建築物でも、非構造部材の被害が相次いだ。仙台市青葉体育館で繊維系素材の天井仕上げ材や吊り部材が落下〔写真7〕。震度6強が観測された福島県新地町にある新地町図書館では、DPG(ドット・ポイント・グレージング)工法で留め付けたガラスが破損した。両施設とも安全確認のため2月末時点で休館中だ〔写真8〕。スプリンクラーなどの設備被害が生じた施設も相次いだ〔写真9〕。

〔写真7〕繊維系天井材と吊り部材が落下
(写真:日経アーキテクチュア)
(写真:日経アーキテクチュア)
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(写真:日経アーキテクチュア)
(写真:日経アーキテクチュア)
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天井材が落下した仙台市青葉体育館の内部。東日本大震災後に張ったネットで落下が食い止められた部分もあった。天井材は比重が軽い繊維系素材だったが、金属製の吊り部材も同時に落ちていた
〔写真8〕DPG工法のガラススクリーンが破損
〔写真8〕DPG工法のガラススクリーンが破損
ファサードのガラススクリーンが破損した新地町図書館。ビニールシートで覆われているのがガラスの破損部分だ。施設は地震後から休館している。建物は2階建てRC造で、1996年に竣工していた(写真:池谷 和浩)
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〔写真9〕設備被害で漏水発生
(写真:池谷 和浩)
(写真:池谷 和浩)
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(写真:池谷 和浩)
(写真:池谷 和浩)
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2015年に完成した鉄骨造一部RC造の国見町庁舎では揺れで3階天井から漏水が発生、原因特定のため廊下の天井を取り外した。写真の人物は被害を説明する国見町総務課の中條伸喜課長補佐。漏水は空調配管から熱媒の水が流れ出たものとみられる。庁舎では屋上の高圧電線を支持する置き基礎も転倒した