免震・制振ダンパーの検査データ改ざん問題で、KYBの外部調査委員会は調査報告書をまとめた。「技術力や生産能力を超えた受注ありきの工場運営が成されていた」と、報告書で断じた。なぜ不正は20年近くも続いたのか。
「そもそもの技術面や生産能力面において問題のある製品であったと言わざるを得ない」
KYBの外部調査委員会(委員長:難波孝一・元東京高等裁判所判事、森・濱田松本法律事務所客員弁護士)が2月4日付でまとめた報告書の一文だ。KYBの子会社であるカヤバシステムマシナリーが製造していた免震ダンパーのうち、主力製品の一部の型式についてそう評した〔写真1〕。
免震・制振用のオイルダンパーは、組み上げた後に試験機に掛け、減衰力特性が所定の公差(許容される差)の範囲内かを確認する。仕様を満足するまで再調整と試験を繰り返すルールだ。だが、ダンパーには設計上の問題があり、さらに製造現場は再調整すると納期に間に合わない状態だった。不正は起こるべくして起こっていた、と報告書はKYBの企業体質を批判した〔写真2、図1〕。
- 規範意識の欠如
- 真実と向き合わない風土
- 受注ありきの工場運営
- 検査の不備
- 検査機の不正防止の欠如
- 情報共有体制の不全
- 重要業務の独占
- 品質監査の不備
- 事業化での見通しの甘さ
報告書では、量産品の性能がばらつくという不都合な真実に向き合わず、改善を怠ったままだったことが問題視された(資料:KYBの資料を基に日経アーキテクチュアが作成)