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宿泊客の男性が客室のバルコニーから転落死した事故を巡り、遺族がアパホテル(東京都港区)を相手取って慰謝料などを請求した裁判で、1審の東京地方裁判所は同社に約1780万円の支払いを命じる判決を下した。

 ホテルの22階から宿泊客の男性が転落死したのは、バルコニーが安全性を欠いていたからだとして、遺族がアパホテルに慰謝料など約1億3162万円の支払いを求めた裁判で、2月27日に判決が下った。

 東京地方裁判所は、バルコニーの柵の高さが建築基準法施行令126条1項に違反していると判断。約1780万円を支払うようアパホテルに命じた。同社は控訴する方針だ。

 判決文によると、事故が発生したのは大阪市西区にある「アパホテル大阪肥後橋駅前」。2019年7月31日から宿泊していた当時46歳の男性が、翌8月1日の午前6時22分ごろ、22階の客室バルコニーから誤って歩道に転落して即死した〔写真1〕。

〔写真1〕事故現場となったホテル
〔写真1〕事故現場となったホテル
アパホテル大阪肥後橋駅前。地上30階建てで、2007年開業。新型コロナウイルス陽性者の宿泊療養施設として21年12月から休業中(写真:毎日新聞社/アフロ)
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 バルコニーは、大阪市の「高層建築物等に係る防災指導基準」に基づき、一時避難場所(避難者が一時的に安全に待機できる場所)として設けられた。通路幅65cmで、高さ72cmの金属柵が設置されていた〔写真2〕。

〔写真2〕柵以外に転落防止措置はない
〔写真2〕柵以外に転落防止措置はない
アパホテル大阪肥後橋駅前の客室バルコニーの2020年2月ごろの様子。バルコニーの両端には避難器具(避難はしご)が設置されている(写真:読者提供)
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 客室からバルコニーに出るには、客室床から高さ73cmの位置にある腰高窓を通る必要がある〔図1〕。

〔図1〕柵の高さは腰高窓よりも低い
〔図1〕柵の高さは腰高窓よりも低い
客室の窓付近の断面イメージ。客室床から高さ73cmの位置に幅77cm、高さ120cmの窓が設置されている(資料:判決文を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 窓の下枠には金属製の開閉制限器具が取り付けられていた。同器具の安全ピンを抜くと、窓は内側に90度程度まで開く。通常、ピンはプラスチックカバーで保護されている。