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外観や機能を損なわずに建物を免震化する新工法をスターツCAM(東京都中央区)が開発した。建物をジャッキアップせずに、補強した基礎梁の下に開口を設けて免震装置を設置することで、施工費を抑えられるのが特徴だ。

 築100年を超える建物の基礎梁の下に設けた開口に、滑り支承や滑り板などを挿入する〔写真1〕。これは、スターツCAMが新たに開発した「ジャッキアップレス免震レトロフィット工法」の施工の様子だ。同社は、1917年に竣工した岡崎信用金庫資料館(旧岡崎銀行本店)の改修に新工法を採用し、20年12月に完成した〔写真2〕。発注者は岡崎信用金庫(愛知県岡崎市)だ。

〔写真1〕施工費を40%削減
〔写真1〕施工費を40%削減
ジャッキアップレス免震レトロフィット工法では、ダイナミックデザイン(東京都新宿区)製の滑り支承と滑り板、極東鋼弦コンクリート振興(東京都中央区)製のフラットジャッキを使用した(写真:スターツCAM)
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〔写真2〕1917年竣工の国登録有形文化財を免震改修
〔写真2〕1917年竣工の国登録有形文化財を免震改修
愛知県岡崎市に立つ岡崎信用金庫資料館。旧岡崎銀行本店として鈴木禎次が設計し、1917年に竣工。レンガ造、一部鉄筋コンクリート造の地上2階建てで、2008年に国の登録有形文化財となった(写真:日経アーキテクチュア)
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 既存建物の基礎などに免震装置を新たに設ける免震レトロフィット工法は、これまでに東京・上野の国立西洋美術館本館や香川県庁舎など様々な歴史的建造物の免震改修工事で採用されてきた。外観や機能を損なうことなく耐震性を確保できるというメリットがある。一方で、既存建物をジャッキアップして架台で仮受けした後に免震装置を設置するなど、工事が大掛かりになるため、施工費が高額になることが課題だった。

 新工法はこうした課題を解決するものだ。スターツCAM建築事業本部免制震構造研究所の中西力所長は「一般的な免震レトロフィット工法と比較して施工費を約40%削減できた。今回は地震動レベル2でも建物の損傷を抑えられるようにしている」と説明する。同社は新工法を特許出願中だ。