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 3月16日午後11時36分ごろに発生した、福島県沖を震源とするマグニチュード(M)7.4の地震。宮城県の登米市や蔵王町、福島県の相馬市や南相馬市、国見町で最大震度6強を、東北地方の広範囲で震度5弱以上を観測した〔図1〕。

〔図1〕5市町で最大震度6強を観測
〔図1〕5市町で最大震度6強を観測
気象庁が発表した推計震度分布。宮城県の登米市と蔵王町、福島県の国見町と相馬市、南相馬市で震度6強を、東北地方の広範囲で震度5弱以上を観測した。同庁は震源を福島県沖57kmと推定している(資料:気象庁)
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 総務省消防庁の3月31日時点のまとめによると、住宅被害は全壊35棟、半壊218棟、一部破損が4335棟〔図2〕。倒壊などの被害は少なかった。日経アーキテクチュア記者が被災地での取材を通じて多く目にしたのは、天井材の落下や建築物の外壁・内壁の脱落、窓ガラスの破損といった非構造部材の被害だった〔写真14〕。

〔図2〕福島県沖地震による被害
〔図2〕福島県沖地震による被害
地震による死者は3人、重傷者は26人。全壊や半壊した住宅は比較的少なかったが、一部破損は4335棟に上った。被害は宮城県と福島県に集中した。数値は3月31日時点(資料:総務省消防庁)
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〔写真1〕ホテル屋上の塔屋が傾く
〔写真1〕ホテル屋上の塔屋が傾く
福島県国見町に立つホテルでは、屋上の塔屋が傾き、外壁一面にひび割れが生じていた。施設は2022年に解体予定だった。22年3月19日撮影(写真:日経アーキテクチュア)
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〔写真2〕震災復興で整備した漁業施設にも被害
〔写真2〕震災復興で整備した漁業施設にも被害
屋外階段と壁柱の接合部付近に深い亀裂が入った福島県相馬市内の漁業施設。東日本大震災の津波被害からの復興を目指し、2016年にオープンした。22年3月20日撮影(写真:池谷 和浩)
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〔写真3〕有名学校建築が被災
〔写真3〕有名学校建築が被災
宮城県白石市に立つ白石第二小学校。体育館にある可動式の側壁が折れ曲がった。小学校は1997年にBCS賞を受賞。設計は芦原太郎建築事務所・北山恒+アーキテクチャーワークショップJV。2022年3月18日撮影(写真:日経アーキテクチュア)
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〔写真4〕大規模商業施設の壁面が脱落
〔写真4〕大規模商業施設の壁面が脱落
福島県相馬市の幹線道路沿いに立つショッピングモール(2022年3月20日撮影)。壁面が広範囲で脱落した(写真:池谷 和浩)
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JR福島駅前に立つ元商業施設(22年3月17日撮影)(写真:斎藤 隆夫)
JR福島駅前に立つ元商業施設(22年3月17日撮影)(写真:斎藤 隆夫)
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 被災した建物のなかには、2021年2月の福島県沖地震(以下、21年福島県沖地震)で被災し、復旧が完了したばかりの施設が少なくない。

 21年福島県沖地震で天井が崩落するなどの被害を受けた日本中央競馬会(JRA)の福島競馬場では、今回の地震でも天井や内壁、床面の破損、漏水などの被害に見舞われた〔写真5〕。漏水によって通電できず、22年3月の福島競馬は中止に。JRA福島競馬場総務課の担当者は「21年11月に復旧工事が完了したばかりだったのに」と肩を落とす。

〔写真5〕復旧完了後わずか4カ月で被災
〔写真5〕復旧完了後わずか4カ月で被災
福島競馬場スタンド5階の様子。壁や床面の破損、漏水といった被害を受けた。漏水によって通電できず、3月9日と10日に予定していた福島競馬を中止した。スタンドは2021年福島県沖地震でも天井パネルが落下するなどの被害を受けた(写真:日本中央競馬会福島競馬場)
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 コンサートホールや展示室、会議室を擁する延べ面積約2万m2の複合施設、郡山市民文化センター(けんしん郡山文化センター)も21年福島県沖地震に続いて被害に見舞われた施設の1つだ〔写真6〕。

〔写真6〕空調用冷温水配管から水が噴き出る
〔写真6〕空調用冷温水配管から水が噴き出る
郡山市民文化センター(けんしん郡山文化センター)の被害。4階機械室の空調用冷温水配管の破断で水漏れが発生した(写真:郡山市)
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 同センター管理課の鈴木典秋課長心得は、「舞台機構(吊り物レールなど)や空調ダクトに被害が出た」と話す。大ホールでは天井パネルや壁面が落下し、ホワイエで水漏れが発生した。鈴木課長心得は、「舞台の吊り物については構造的に地震に弱いため、抜本的に構造を変えない限り、被害を防ぐのは難しい」と話す。

 21年と同様の被害が生じた施設では、原状回復で済ませるのではなく、復旧方法に工夫が必要だ。