自治体が進める公共施設の改修計画を巡り、新築時の設計者が著作権侵害を理由に裁判所へ工事禁止の仮処分を申し立てる騒動が起こった。申立人で建築家の大宇根弘司氏は、自治体への憤りを隠さない。
「改修案には驚いた。なぜこんな動線を採用したのか」。日経アーキテクチュアの取材に対し、日本建築家協会(JIA)元会長の大宇根弘司氏(大宇根建築設計事務所)はそう語気を強める。かつて設計を手掛けた施設の改修案について、所有者の東京都町田市を相手取り、4月20日に東京地方裁判所立川支部へ工事禁止の仮処分を申し立てた〔写真1〕。
東京地裁はこの事案を本庁に移管、6月にも双方への審問手続きを実施する見通しだ。
問題の施設は、町田市芹ヶ谷公園で1986年に竣工した市立国際版画美術館。地下1階・地上3階建て、延べ面積7840.2m2で、2018年には「市民協働の場となっている我が国唯一の版画美術館」として、第27回BELCA賞ロングライフ部門表彰を受けた建物だ。それが改修により「取り返しがつかない状態に破損される恐れがある」(申立書より)という。