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3月の福島県沖地震で、震央から90km以上離れた仙台市内に300件程度の宅地被害が発生していたことが、日経クロステックの取材で明らかになった〔写真1〕。震度5強でこれほど被害が多発したのはなぜか。

〔写真1〕福島県沖地震で崩れた擁壁
〔写真1〕福島県沖地震で崩れた擁壁
仙台市太白区緑ケ丘4丁目付近の擁壁被害。人的被害はなかった(写真:日経クロステック)
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 3月16日に発生した福島県沖地震で、震度5強の揺れを観測した仙台市。6月30日時点で、市民からは擁壁や宅地などの被害報告が299件も寄せられている。

 同市では2011年の東日本大震災でも盛り土造成地で多数の被害が報告された。ただし、当時の震度は6強。地盤の専門家などによると、震度5クラスの地震でこれほど被害報告が上がるのは珍しい。21年2月の福島県沖地震で震度5弱の揺れに見舞われた際の被害は6件だった。

 報告を基に市職員が現地を確認し、擁壁や宅地地盤、法面、自然斜面などの被害を危険度判定票に基づいて分類すると、内訳は以下のようになった。特に危険で避難や立ち入り禁止措置が必要な「大被害」が39件、制限付きの立ち入りが可能な「中被害」が102件、当面は防災上問題のない「小被害」が158件だ〔図1〕。

〔図1〕約半数が大被害と中被害
〔図1〕約半数が大被害と中被害
仙台市に報告があった擁壁や宅地などの被害状況の内訳。報告数は2022年6月30日時点で計299件だ(資料:仙台市)
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 被災した場所によっては、「東日本大震災のときよりも被害はひどかった」という声が上がっている。

 例えば、太白区緑ケ丘4丁目の盛り土造成地で生じた擁壁の崩壊が象徴的だ〔写真2〕。東日本大震災当時、擁壁の上には家屋が立っていたとみられるが、崩れることはなかった。一方、22年3月の福島県沖地震の時点で家屋はなく、震災当時よりも上載荷重が小さい状態だったにもかかわらず、擁壁は崩れてしまった。

〔写真2〕家屋のない宅地で崩壊した擁壁
〔写真2〕家屋のない宅地で崩壊した擁壁
仙台市太白区緑ケ丘4丁目付近で発生した擁壁の崩壊。左隣に見えるのは2011年の東日本大震災で被災し、アンカーで対策を講じていた擁壁。今回の地震では被害はなかった(写真:日経クロステック)
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