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100年以上の歴史を持つ北九州市の旦過(たんが)市場で8月10日夜に大規模火災が発生した。火は消防隊が近づけないほどの勢いで燃え広がり、消火活動が難航。3324m2が焼損した。4月の大規模火災を上回る被害となった。

 鮮魚店や総菜店などが軒を連ねていたアーケード街は原型をとどめていなかった。通りの脇には焼失した店舗のがれきが山積みになったまま〔写真1〕。火災発生から1週間が過ぎた8月18日でも周囲はまだ焦げ臭かった──。ここは100店舗以上が立ち並ぶ「北九州の台所」として人々に親しまれてきた旦過市場だ。

〔写真1〕半数近くの店舗が焼損
〔写真1〕半数近くの店舗が焼損
火災で焼損した旦過市場。JR小倉駅から南西約600mの場所にある。南北に延びる約180mのアーケード街を中心に鮮魚店や総菜店など計約110店舗が軒を連ねていた。8月18日撮影(写真:日経アーキテクチュア)
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 市消防局によると、火災の覚知は8月10日午後8時54分。火は瞬く間に市場の店舗をのみ込み、鎮火には約22時間を要した。市消防局職員は、「想定以上の熱量で近づけなかった。注水しようにもトタン屋根が邪魔でうまく消火できなかった」と振り返る。火災による死傷者は出なかったが、市場東側の新旦過横丁を中心に3324m2が燃えて、45店舗が焼損した〔図1写真2〕。9月6日時点で火元は明らかになっていない。

〔図1〕2度の火災で約5200m2が焼損
〔図1〕2度の火災で約5200m<sup>2</sup>が焼損
旦過市場では短期間で2度も大規模火災が発生した(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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市消防局が実況見分をしている様子(写真:日経アーキテクチュア)
市消防局が実況見分をしている様子(写真:日経アーキテクチュア)
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8月の火災で焼失した創業83年の映画館「小倉昭和館」の跡地。8月18日撮影。市は2021年2月に市場の防災力の強化に向けた再整備計画を決定したばかりだった(写真:日経アーキテクチュア)
8月の火災で焼失した創業83年の映画館「小倉昭和館」の跡地。8月18日撮影。市は2021年2月に市場の防災力の強化に向けた再整備計画を決定したばかりだった(写真:日経アーキテクチュア)
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〔写真2〕網戸や看板が熱で変形
〔写真2〕網戸や看板が熱で変形
小倉昭和館正面のマンションと店舗。網戸や看板が熱で変形した。桜設計集団の安井昇代表は、「小倉昭和館のエントランス側から、勢いよく炎が吹き出ていたのだろう」と推測する(写真:2点とも安井 昇)
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 旦過市場では4月19日に、42店舗、1924m2が焼損するといった大規模火災が発生したばかりだった。

 なぜ大規模火災は繰り返されたのか、両方の火災に共通する問題が背景にある。火災が起こった場所は、細い通路を挟んで長屋構造の古い木造店舗が連なる密集地だった。ほとんどの店舗が既存不適格の状態で、スプリンクラーの設置や、防火管理者の設置義務もなかった。

 いずれの火災発生時にも2016年に設置した自動火災通報装置が正常に作動したが、消防隊が到着した時には延焼が拡大していた。1度目の火災後、市消防局は市場関係者と初期消火の手順を確認するなどして再発防止に努めていたという。

 北橋健治市長は8月18日の定例会見で「短期間で2度も大規模火災が発生したことを重く受け止めている」とコメント。8月26日には防火指導員を新たに14人配置するなど防火指導の強化を表明し、今後の対策を検討する有識者検討会を設置する方針も示した。