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モダンな躯体に瓦ぶきの勾配屋根を掲げた「帝冠様式」で知られる旧九段会館。一部保存しながら建て替えるプロジェクトが進行中だ。免震レトロフィット工法を導入。当時の貴重な建材や装飾を保存・復元する。

 東急不動産と鹿島が東京都千代田区で進めている「(仮称)九段南1丁目プロジェクト」。登録有形文化財である旧九段会館を一部保存しながら建て替えるプロジェクトは、2022年7月に竣工する予定だ。それに先立ち、旧九段会館部分の保存・復元工事は21年12月の完了を目指す。

 建物は保存部分と高層の新築部分から成り、高さが約75mのビルに生まれ変わる。開業は22年10月ごろになる見通しである。

 保存・復元工事で一番大掛かりなのは、免震レトロフィット工法の導入だ〔写真1〕。旧九段会館は、鉄骨鉄筋コンクリート造の耐震壁付きラーメン構造。今回は、地下1階の柱に免震支承を設置する。大地震時の層間変形角を、免震化によって1000分の1以下に抑える。

〔写真1〕正面玄関の大庇を支える柱に免震支承を設置
(写真:日経クロステック)
(写真:日経クロステック)
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(写真:日経クロステック)
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旧九段会館を一部保存・復元しながら、超高層ビルに建て替える「(仮称)九段南1丁目プロジェクト」が進行中だ。旧九段会館部分の免震化がまもなく完了する

 免震化工事ではまず、仮設ジャッキで柱にかかる建物の荷重を受け替え、柱の下部を切断して免震支承を挿入するスペースをつくる。そこに「鉛プラグ入り積層ゴム」(ブリヂストン製)を設置する〔図1〕。最後にジャッキを外して工事完了だ。地下1階部分の柱に、取り付ける免震支承の数は68基に及ぶ。

〔図1〕免震支承は地下1階の柱の途中に設置
〔図1〕免震支承は地下1階の柱の途中に設置
旧九段会館では、地下1階の柱の途中に免震支承を設置する中間階免震を採用した。杭や基礎梁がしっかりしているため、地下に免震ピットを設けるより、中間階免震が施工しやすいとの判断だ。免震支承には「鉛プラグ入り積層ゴム」を採用している。この他、滑り支承も用いて免震性能を高めている(資料:東急不動産、鹿島の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 また、建物の正面玄関にある大庇を支える1階の柱には、免震支承として「滑り支承」を設置する。工事中の現在は4本の柱が宙に浮いているように見える〔写真2〕。

〔写真2〕免震支承の設置後に仕上げの石材を戻す
〔写真2〕免震支承の設置後に仕上げの石材を戻す
正面玄関の大庇を支える柱に免震支承を設置する工事の様子。柱の両側をジャッキで支えながら免震支承を取り付ける。柱の下部を切断し、中の鉄筋がむき出しになった状態の柱(左)。免震支承を設置する土台をつくり、隙間に免震支承を挿入する(右)。ここでは「滑り支承」を用いる。柱の仕上げに使う石材は保管してあり、免震支承を設置した後に元に戻す(写真:日経クロステック)
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 鹿島東京建築支店の(仮称)九段南1丁目プロジェクト工事事務所の神山良知所長は、「ジャッキアップしている今が最も緊張する期間だ」と説明する。免震化工事で難しいのは、建物の傾きを抑えること。ジャッキで支える柱と柱の間の傾きは2000分の1以下の勾配に抑えながら、工事を進める。