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大阪労働局が是正指導

 自身の就労状態に疑問を感じた男性は、大阪労働局に偽装請負の状態で働かされているのではないかと申告。大阪労働局は19年8月、竹中工務店の現場事務所を調査した〔図3〕。調査と前後して、竹中工務店の社員は男性に「偽装請負はどこでもやっていることだから気にしないように」とくぎを刺したという。

〔図3〕入社から提訴まで約半年
2019年6月7日 ハローワークからの紹介で、原告の男性が日本キャリアサーチと面接。直後に正社員の内定を受ける
7月12日 男性が大阪市内の竹中工務店本社でTAKシステムズとの打ち合わせに同席し、業務内容の説明を受ける
8月2日 男性が竹中工務店の現場事務所で施工図の作成業務を始めた。
着任当初から竹中工務店に、自らの立場は派遣労働者ではなく、委託先の従業員だと伝えたという
8月13日 男性が大阪労働局に、偽装請負の状態で働かされているのではないかと申告
8月30日 大阪労働局が竹中工務店の現場事務所を訪問調査
9月20日 日本キャリアサーチは男性に、竹中工務店との直接の派遣契約に切り替えるよう提案
9月27日 男性が派遣契約への切り替えを断る
9月30日 日本キャリアサーチは男性と面談し、解雇を言い渡した
11月21日 大阪労働局がTAKシステムズを職業安定法違反で是正指導
11月25日 大阪労働局が竹中工務店を職業安定法違反で是正指導
12月2日 日本キャリアサーチが原告側代理人に解雇理由証明書を送付
12月26日 男性が大阪地裁に提訴
事件の経緯。男性は日本キャリアサーチに入社してすぐに、竹中工務店の業務に当たった。現場の業務に従事してから提訴までは約5カ月だった(資料:訴状を基に日経アーキテクチュアが作成)

 調査後、日本キャリアサーチは男性に竹中工務店との直接の派遣契約に切り替えるよう提案したが、不信感を抱いていた男性は変更を拒否。すると、日本キャリアサーチは男性を同年10月末に解雇した。

 その後、大阪労働局は同年11月下旬、職業安定法44条で禁止している労働者供給に当たるとして竹中工務店とTAKシステムズを是正指導した。労働者供給は労働者派遣と似ているが、派遣と異なり供給元の企業と労働者の間に雇用関係がないのが基本的な違いだ。

 日本キャリアサーチを通じて竹中工務店に男性を送り込んだTAKシステムズと男性の間には雇用関係がないため、大阪労働局は今回のケースを労働者供給に当たると解釈したとみられる。

竹中との雇用関係を主張

 原告の男性は、違法な就労状態に置かれたうえ、大阪労働局の調査後に解雇されたことによる精神的な被害を訴え、3社に連帯して損害賠償220万円を支払うよう求めている。

 原告側代理人の村田浩治弁護士らは、「偽装請負の申告によって男性が不利益を被らないように大阪労働局が警告していたにもかかわらず、日本キャリアサーチは男性を解雇した。これがまかり通れば労働者は萎縮して申告できない」と指摘する。

 また、労働者派遣法40条の6には、偽装請負などで働かせていた企業は働き手に労働契約を申し込んだとみなす規定があることから、原告の男性は竹中工務店と雇用関係にあるとして、19年12月から判決が確定するまで毎月37万円の賃金の支払いなどを竹中工務店に求めている。

 裁判の争点は、大阪地裁が男性の就労実態を労働者派遣に当たると判断するかどうかだ。労働者供給であれば、労働者派遣法のみなし規定が適用されないため、男性と竹中工務店の雇用関係も成立しない。村田弁護士は、「TAKシステムズと男性の間に雇用関係がなくても、実態は労働者派遣と何ら変わりない。多重請負の状態で労働者が発注元の企業から指揮命令を受けたときにはみなし規定が適用されないという制度の不備を社会に問いたい」と語る。

 被告の3社は訴訟について「コメントできない」としている。