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 政府は大気汚染防止法や石綿障害予防規則を改正し、解体・改修工事などで石綿(アスベスト)を除去する際の事前調査や届け出などに関する規制を大幅に強化する〔図1〕。老朽化した建物の解体や改修が増えるなか、施工者がアスベストの存在を見落としたまま工事しないようにする狙いがある。建設会社などは対応を迫られそうだ。

〔図1〕アスベスト除去の作業前から作業後まで規制を強化
  厚生労働省の検討会の中間取りまとめ 環境省の審議会の答申
作業前
  • 建築物石綿含有建材調査者講習の修了者などが事前調査を実施する
  • 一定の講習を修了した人や同等以上の知識や経験を有する人が分析の作業を実施する
  • 解体部分の床面積の合計が80m2以上の解体工事や請負金額が100万円以上の改修工事では、工事の施工者が調査結果などを労働基準監督署に届け出る
  • 一定の知見を有する人が事前調査を実施する
  • アスベストの有無にかかわらず一定規模以上の工事で、工事の施工者が調査結果などを都道府県などに報告する
除去作業
  • 吹き付けアスベストやアスベストを含有した保温材などは除去作業の完了を確認してから、隔離を解く
  • アスベストを含有するケイ酸カルシウム板第1種を破砕する場合は、作業場所の周囲を隔離する
  • 特定建築材料だけでなくその他の石綿含有建材に関しても作業基準を作成し、法律上の規制対象にする
  • 作業基準違反への直接罰を検討する
作業後
  • 作業状況を写真などで記録し、一定の期間保存する
  • 一定の知見を有する人が取り残しがないか確認する
  • 工事の受注者は作業記録を保存し、発注者に作業結果を報告する
作業前の届け出のほか、除去作業の基準も強化する(資料:厚生労働省と環境省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
現行法で作業基準を厳格に定めている建材だけでなく、成形板(写真)なども規制対象とする(写真:国土交通省)
現行法で作業基準を厳格に定めている建材だけでなく、成形板(写真)なども規制対象とする(写真:国土交通省)
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 厚生労働省が2020年度の改正を目指すのは石綿障害予防規則だ。同省の「建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策等検討会」は1月6日、規則の改正について方向性を示した。19年度内にも報告書を取りまとめる。

 影響が大きいのは、事前調査結果などの届け出を求める制度の新設だ。厚労省はアスベストの有無にかかわらず一定の要件を満たす工事を届け出の対象とする。

 解体部分の床面積の合計が80m2以上の解体工事、材料費も含めた工事全体の請負金額が100万円以上の改修工事が対象となる。

 工事の元請け会社は原則として電子届により、工事に関する基本情報や事前調査の結果などを労働基準監督署に届け出る。行政が現場の状況を把握して、必要な指導ができるようにする。

 現在は、吹き付けアスベストやアスベストを含有した保温材などを除去する工事で、施工者が労働基準監督署に届け出をする必要があるが、事前調査や届け出を怠って工事を実施した事例が多くあった。