新型コロナウイルスの感染拡大により、「建築主から訪問を断られ、建築士法に基づく重要事項説明(重説)ができない」という状態が多発。相次ぐ問い合わせに特定行政庁も対応に困っていた中、国土交通省は建築士にも「IT重説」を認めるとする暫定措置を発表した〔図1〕。
建築士の重説は2008年に始まった制度で、士法24条の7に基づく。これは従来、建築主への対面説明が原則だと解釈され、完了時に建築士と建築主の双方が書面に署名・押印して、重説実施の記録を残すのが一般的だった。
重説義務を規定した士法24条の7第1項は、建築士事務所の開設者に対し、所属建築士に建築主への書面交付と説明を行わせることを義務付けている。ただ、この条文自体は、非対面説明でも実施可能な内容に読める。今回の通知で焦点となったのは、重説実施前における建築士の免許証提示義務を定めた同第2項の解釈だ。
この「提示」について国交省は従来、「対面説明時に行うもの」とする法解釈を示しており、この解釈が非対面説明を阻んでいた。
国交省住宅局建築指導課は今回、コロナ禍における暫定措置として、「画面上で建築士が免許を提示し、建築主がそれを確認する」という方法でも法的な掲示義務を満たすとの解釈を許容した〔図2〕。
建築主の事前同意が必要
国交省の5月1日付通知がいうIT重説とは、「テレビ会議などITを活用した説明方法」を指す。原則として、「映像を確認でき、音声を聞き取ることができるとともに、双方向でやり取りできる環境」が必要だとした。テレワークが広がる中で普及している、インターネットを利用したテレビ会議システムなどが相当するといえる。
端末やソフトなどの仕様は問わない。環境整備が困難であるなど、やむを得ない事情がある場合について、5月1日付通知は「事態に鑑み、重説を事前に録画したメディアを建築主に送付し、質疑に関しては電話などで受け付けるなど、柔軟な対応をしても、重説として扱って差し支えないこととする」としている。
なお、IT重説を実施するには、建築主の事前同意、法定書面の事前送付なども必要だ。