新型コロナウイルスが自治体の公共事業に影響を及ぼし始めた。静岡市は5月29日、同市役所清水庁舎の移転・新築など3つの建設事業を停止すると発表した。事業費は総額約400億円に上る〔図1〕。景気の悪化に伴い民間プロジェクトの先行きに不透明感が増す中、公共事業にまで延期や中止が相次げば、建設業界に与えるダメージは大きい。
静岡市の田辺信宏市長は「喫緊の課題であるコロナ対策に注力する。各事業について、コロナ禍が収束した後の『新しい生活様式』も視野に入れながら見直しの議論を進める」と説明した。再開時期は未定だ。
凍結したのは、市役所清水庁舎の移転・新築、海洋文化施設の建設、歴史文化施設の建設。20年度予算では3事業合わせて7億3000万円を計上していた。新型コロナ対策の影響で市の財政が逼迫し、事業の停止を余儀なくされた。
PFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式を採用し、23年5月の開庁を目指して20年6月に入札を予定していた清水庁舎の総事業費は94億円。同市アセットマネジメント推進課清水庁舎建設室は、「アフターコロナの『新しい生活様式』に合わせて事業をどう見直すか、国の動きも見ながら検討していく」と話す。
清水庁舎と同じくPFI方式を採用し、24年3月の開業を目指していた海洋文化施設「(仮称)海洋・地球総合ミュージアム」も、事業停止によって開業時期が遅れる見込みだ。
徳川家康公などを題材とした歴史文化施設はSANAAが設計を担当しており、20年6月末までに実施設計を終える。その後、工事の入札手続きに移る予定だったが、一旦事業を停止する。この施設はもともと、19年12月に着工して21年秋に開館する予定だった。しかし、敷地で戦国時代末期の遺構が発見されたため、市は遺構を保存しながら施設を整備するためにSANAAに再設計を委託。再設計の完了目前で事業停止が決まった。22年秋以降に延期していた開館がさらに遅れる公算が高い。