崩落の原因調査は行われず
応急復旧と本格復旧に要する費用について市はこれまで、道路法58条に基づき、道路の安全性を損なう原因をつくった当事者に請求する方針を示していた。応急復旧費用は約1億4600万円だ。
このため土地所有者側は事故当初、市との協議を拒否する姿勢を取っていた。所有者の1人は、「住む土地も家も失い、撤去費用すら払える状況にない。復旧工事の実施を認めると、何らかの費用を負うことになるのではと不安だった」と話す。
市が一転して自ら費用を負担することにしたのは、道路の安全性が脅かされないよう、本格復旧を急ぐためだ。事故原因については、土地所有者と、崖下でサービス付き高齢者向け住宅を施工していた建設会社や事業者がそれぞれ自らに非はないと主張していたものの、いずれも第三者による調査などは実施しておらず、特定は難しいと判断した。
市が調査を実施しない理由について市建設局は「民地の事故に介入する立場ではないからだ。また、当事者が調査したとしても、擁壁や土砂が崩れた現状から原因を特定するのは困難だろう」とする。
擁壁の本格復旧工事で市は、箱形のプレキャストコンクリート枠材を階段状に積み上げる箱形擁壁を採用する予定。22年度中に工事を終える考えだ。