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 京都府和束町が2021年に実施した「和束町総合保健福祉施設設計業務公募型プロポーザル」における不透明な選定プロセスに対して、建築界の各所から経緯の説明などを求める声が上がっている。

 町はこれまで詳細な説明を避けてきたが、22年6月7日の和束町議会議員全員協議会で堀忠雄町長が「法的な問題がないことを確認し、行政裁量権により特定した」と初めて説明した。議会が全員協議会で経緯などについて説明するよう町に要請し、堀町長が応じた。

 同プロポーザルで町は、選定委員会(委員長:長坂大・京都工芸繊維大学教授)による審査結果が1位と2位で僅差だったことを理由に、最初に1位の事業者と交渉すると定めた募集要領に反し、上位2者と同時に交渉を進めた。その結果、1位だったteco(東京都台東区)ではなく、2位のシーラカンスアンドアソシエイツ(東京都渋谷区、以下シーラカンス)を特定した。

 これに対してtecoとシーラカンスはそれぞれ22年3月25日までに声明を発表。シーラカンスは町に対して選定経緯に関する説明を求めた。tecoやその協力事務所は連名で、日本建築学会や日本建築家協会(JIA)などに嘆願書を提出。同学会やJIAが町の対応に苦言を呈していた。

 和束町は、全員協議会に出席した議員にこの問題に関する資料を配布。町総合施設整備課の担当者が資料を基に経緯を説明した。日経アーキテクチュアが入手した資料によると、2者と同時に交渉を行った経緯について町は、おおむね以下のように記している〔図1〕。

〔図1〕「おかしなことはしていない」と町長
〔図1〕「おかしなことはしていない」と町長
堀忠雄町長は施設の建設に向けて設置した和束町総合保健福祉施設建設委員会で2022年4月、「両者を1位と見なした」「おかしなことはしていない」などと明言していた(資料:岡本正意町議、写真:読者提供)
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 「選定委員会の審査結果によると、tecoとシーラカンスの評価点の差は小数点以下の僅差だった。審査講評では『ともに町のシンボルとなると見込まれる提案である』などと評価されたため、町は行政裁量権により両者を受注候補者に特定した」