三井不動産、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事の4者が進める「(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業」。工事に伴う樹木の伐採を巡って、東京都の環境影響評価(環境アセスメント)が長引いている。5月26日にあった5回目の審議会で、総括審議の結論が持ち越されるという異例の事態が発生した。
本来であれば同日中に結論を出し、小池百合子都知事に答申する予定だったとみられる。ところが、複数の委員から伐採・移植する既存樹木について「1本ごとの検討が必要であり、毎木調査をしているのに資料を出していないのであれば、審議はできない」「外苑のシンボルであるイチョウ並木に対して、近傍で行われる神宮球場の工事がもたらす環境影響を判断できる具体的な情報が出ていない」などと指摘が相次いだ。次回の開催日は6月28日時点で未定。事業に待ったがかかっている。
「国民からの献金、献木などで造営された外苑の成り立ちを踏まえ、再整備に当たっても、幅広い都民参画に取り組むこと」。小池都知事はその数時間後、再開発の事業者にこのような一文を盛り込んだ要請を出した。都知事が事業者に対して審議途中に要請を出すのも異例だ〔図1〕。小池都知事は翌日の定例記者会見で、「必要な資料をしっかり(審議会に)提出し、真摯に対応するよう事業者に求めている」と話した。