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 奈良市内にある銭湯施設「天然湧出温泉ゆららの湯押熊店」で、7月8日午後2時40分ごろ、露天風呂の屋根が突然崩落した〔写真1〕。6月18日に発生した大阪北部地震後に、屋根を支える柱に傾きを確認したが「倒壊の危険性はない」と判断し、営業を続けていた。

〔写真1〕開業後に複数の屋根を増築
〔写真1〕開業後に複数の屋根を増築
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天然湧出温泉ゆららの湯押熊店の外観(上)と露天風呂の様子(下)。露天風呂には複数の屋根があるものの、いずれも増築申請はされていなかった(写真:上は読者提供、下は天然湧出温泉ゆららの湯公式ホームページより)
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天然湧出温泉ゆららの湯押熊店の外観(上)と露天風呂の様子(下)。露天風呂には複数の屋根があるものの、いずれも増築申請はされていなかった(写真:上は読者提供、下は天然湧出温泉ゆららの湯公式ホームページより)

 崩落した屋根は木造で縦約8m、横約7m。高さ約2.5mの木製の柱6本で支えられており、屋根にはコンクリート製の瓦が敷かれていた。奈良西警察署によると、屋根は真下に崩れ落ち、浴槽と柱は落ちた屋根で見えない状態だった。屋根の崩落に巻き込まれ、入浴中だった男性1人が死亡、2人が軽傷を負った。崩落の原因は調査中だ(7月12日時点)。

 同施設を運営する新英(奈良市)の総務部担当者によると、大阪北部地震後、施設従業員が崩落した屋根を支えていた柱のうち2本が傾いていることに気付いた。しかし、「工務店に調査を依頼した結果、倒れる危険性はないと判断され、安心して営業を続けてしまった」(同社総務部担当者)。

約270施設に緊急点検の通知

 同施設は2005年6月に開業。奈良市の建築指導課によると、04年5月に確認申請が提出され、同年12月に同市が完了検査を行った際には、露天風呂に屋根はなかった。事故当時には、複数の屋根が存在した。

 建築基準法では「土地に定着する工作物のうち、屋根および柱もしくは壁を有するもの」を建築物と定義。敷地内に10m2以上の建築物を増築し、用途が発生する場合は確認申請が必要となる。今回崩落した屋根を増築する際にも確認申請が必要であったが、新英は増築申請を提出していなかった。

 奈良市建築指導課の職員は「今回崩落した屋根は、必要な手続きを行わずに増築したもので、建基法に違反した建築物に該当する」と指摘する。増築申請が必要であったことについて、新英の総務部担当者は「屋根だけなので建築物としての認識はなく、確認申請の必要はないと思っていた」と話した。

 奈良県は、県内で建築物による死亡事故が発生したことを受けて、県独自の判断で露天風呂内の木造建築物に関する緊急点検の通知を発送することを決めた。

 特定行政庁の奈良市、生駒市、橿原市と協力し、7月12日から県内にある公衆浴場とホテル、旅館の計約270件に通知の発送を開始した。露天風呂に木造建築物があるかの報告を求めたうえで、ある場合には、柱や梁に亀裂や腐食がないかの点検を行うように呼び掛ける。