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 木造の柱を基礎に緊結しない「石場建て」など、伝統木造技術を用いた建築物について、熊本県は独自の設計指針による建築確認の受け付けを開始した。限界耐力計算法に基づく簡易設計法を整備、この設計法による建築計画については、県の指定構造計算適合性判定機関である熊本建築構造評価センター(熊本市)が従来の約半額の手数料で審査を実施するという、全国初の枠組みだ。

 県の講習会へ参加した建築士の手による計画が対象で、2020年8月現在で講習会参加者は200人を超す見通しだ〔写真1〕。

〔写真1〕県外からの受講者も
〔写真1〕県外からの受講者も
6月17日に開催された第1回講習会。県内外から受講者が訪れ満席になった。上は、2020年3月に発刊した「くまもと型伝統構法を用いた木造建築物設計指針・同解説」。熊本県建築住宅センターが発行(写真・資料:熊本県)
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 新たな指針は20年2月に策定した「くまもと型伝統構法を用いた木造建築物設計指針」。熊本地震からの復旧・復興4カ年戦略の一環として進めた研究事業の成果だ。

 設計法では接合補強金物を用いず、基礎に柱を緊結しない伝統木造について、安全性の確認手法を整理。熊本県下で使われてきた伝統木造の架構要素や土壁などの耐震要素について、各種の実験をベースに限界耐力設計法で用いる復元力特性などをあらかじめ設定。スパン表による部材断面算定、独自の構造計算ツールなどにより、限界耐力計算を簡略化し、実務者が使いやすくした。簡易設計法は主に住宅を想定したものだが、他の用途にも使える。

 伝統木造は建築基準法の制定以前から存在する技術だが、在来木造の告示基準に合致しない点が多い。00年改正の建基法により限界耐力計算法が適用可能となったが、構造計算書偽造事件を受けた06年改正の建基法により、同計算法を用いた計画は構造計算適合性判定(適判)を受けなければならなくなった。

延べ面積500m2以内に適用

 今回の熊本県による枠組みは、そうした状況を打開する一策だ。伝統木造への根強いニーズに対応し、木造化促進や県産材振興などにつなげる狙いがある。

 県土木部建築課建築指導班は、「従来、一般的な木造住宅の規模(延べ面積200m2以内)では適判に7万7000円の審査手数料が必要だった。今回、ルールを統一することで審査を簡略化し、4万2000円に抑えた」と説明する。適用範囲は最大で延べ面積500m2。同200m2超の場合の審査手数料は8万1000円になる。従来、200m2超1000m2以内は15万3000円だった。

 講習会は6月17日に1回目を実施、月1回ペースで開催している。8月初旬現在、まだこの枠組みを用いた確認申請は出ていないという。

 県では「建築確認が必要ない地域でも、今回の簡易設計法を活用して安全性確保につなげてほしい」と期待を寄せる。