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 横浜市の林文子市長は8月22日、IR(カジノを含む統合型リゾート施設)の誘致に乗り出す方針を正式表明した。林市長は同日の会見で、「税収源の安定化やインバウンドの宿泊客の増加など、IRには横浜の弱点を克服する力がある。横浜市の成長のためには実現させなければならない」と話した〔写真1〕。計画地は横浜港の山下ふ頭(同市中区)。2020年代後半の開業を目指す。

〔写真1〕ギャンブル依存症対策も強化
〔写真1〕ギャンブル依存症対策も強化
8月22日、横浜市庁舎でIR誘致を決断した理由を説明する林文子市長。ギャンブル依存症を増やさないための対策も講じていくと述べた(写真:日経アーキテクチュア)
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 市が示した「横浜IR」のイメージは、(1)延べ面積13万8000~19万2000m2の国内最大級のMICE施設、(2)2700~4800室のグローバル水準のラグジュアリーホテル、(3)一流のエンターテインメントが提供されるアリーナやアトラクション施設─などを有する。

 市が18年度に実施した検討調査で情報提供に応じた、12のIR事業者の提案を基に構成したものだ。

 IR事業者などが試算した経済波及効果も公表した。建設時に最大1兆2000億円、運営時に年間最大1兆円と試算。インバウンドを含むIRへの年間訪問者数は、最大4000万人と推計した。林市長は、「これまでにない経済的・社会的効果が見込める」と説明した。

市民の反対へ「丁寧に説明」

 林市長は財政と観光産業の挽回策としてIRに望みを託すが、一方で誘致を巡っては、市民や港湾関係者などから、ギャンブル依存症の助長や治安悪化を懸念する声が根強い。

 IRの計画地である山下ふ頭を拠点とする横浜港運協会とカジノに頼らず山下ふ頭の観光開発を目指す横浜港ハーバーリゾート協会(YHR)は8月23日、市内で会見を開き、改めて反対姿勢を表明した。

 林市長は、自ら市内18区全てに足を運び、「市民に理解してもらえるよう、丁寧に説明していく」と言う。

 横浜市のIR誘致の正式発表を受け、IR事業者側にも誘致レースの動きが波及。市長会見と同日の8月22日には、中国・マカオを中心にIRを展開するメルコリゾーツ&エンターテインメント・リミテッドが、横浜オフィスを数カ月以内に開設すると発表した。また同日、大阪のIR誘致に関心を示していた米国カジノ大手のラスベガス・サンズは大阪の入札には参加せず、東京と横浜での開発機会に注力する旨を表明している。

 横浜市は今後、IR実現に向けた本格的な検討・準備のための補正予算額として約2億6000万円を計上し、9月3日の市会定例会に提出する。

 横浜市政策局政策部政策課の幸孝憲担当課長は、「国が正式なスケジュール感を示していないため暫定ではあるが、20年春から夏にかけて実施方針を公表し、事業者を公募したい」と話した。