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 国土交通省は8月22日、地震により被害を受けた宅地の危険度判定作業を効率的に実施するための作業指針「被災宅地危険度判定広域支援マニュアル」を公表した。地すべりや液状化などによる地盤の危険性を調べる「被災宅地危険度判定」を迅速化させることで、2次災害の防止や被害状況の確認、整理などに役立て早期復旧につなげる。

 2016年4月に発生した熊本地震や18年9月に発生した北海道胆振(いぶり)東部地震といった広域判定を実施した現場における行政の実体験に加えて、17~18年度にかけて熊本県や仙台市、都市再生機構(UR)、全国宅地擁壁技術協会(擁壁協会)などを対象に実施したヒアリングの結果を反映した。

 大規模地震災害の後に行政が実施する宅地の危険度判定作業は従来、都道府県などの自治体と被災宅地危険度判定連絡協議会が協力して手掛けている。国が直接支援する形で手順などを明示したマニュアルは、存在しなかった。

 しかし熊本地震や北海道胆振東部地震などのように、被害が広域にわたると、地元自治体は人命救助や避難支援といった業務に最優先で当たらざるを得ず、宅地の危険度判定作業については迅速に対応できないことも少なくない。熊本地震でも、熊本県を支援する体制で国が実務を手掛けた経緯があった。

必要な判定士数を算出

 広域支援マニュアルでは、震度6弱以上の地震が複数の市町村にまたがって観測された場合は、当該自治体のみでは対応が困難になると想定。役割分担などを定めている〔図1〕。被害状況や自治体の要請によっては、国やUR、擁壁協会が実質的に実施・支援本部の役割を担うケースもメニューに盛り込んでいる。

〔図1〕国が判定士派遣を代行して自治体を支援
〔図1〕国が判定士派遣を代行して自治体を支援
広域支援のスキーム。被害が複数自治体にまたがる災害では国土交通省(都市再生機構、擁壁協会と協働体制)、被災都道府県、政令市のいずれかが「支援本部」を設置。通常は被災都道府県などが「実施本部」を設置するが、対応できない場合は国交省などが設置する支援本部が実施本部も担う(資料:国土交通省)
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 同マニュアルでは、地震発生後、直ちに被災宅地数を推計して必要な判定士の数を算出するための計算式を提示。判定活動をどのエリアから着手すべきかを判断する手法なども記載している。

 国交省は併せて、「被災宅地危険度判定結果の情報共有マニュアル」も公表した。被害状況を一覧で共有して、復旧や生活再建支援に役立てる。判定計画や判定の進捗をGIS(地理情報システム)フォーマットの電子データで情報を整理する手法を示した。