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 「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律」(改正所有者不明土地法)が11月1日に施行された。所有者不明土地の活用を促す地域福利増進事業をテコ入れしたほか、市町村長による代執行制度を創設した。

 所有者不明土地とは、相続登記がされないなどの理由で所有者の特定や所在の確認が難しい一筆の土地。国土交通省は改正法の施行を機に所有者不明土地対策を加速させる。

 改正法のポイントは3つ。1つ目は「所有者不明土地の利用の円滑化の促進」、2つ目は「災害などの発生防止に向けた管理の適正化」、3つ目は「対策の推進体制の強化」だ〔図1〕。

〔図1〕使える制度への改善を図った
〔図1〕使える制度への改善を図った
改正法の概要。オレンジ色の文字で示したのが改正で追加した点(資料:国土交通省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 1つ目の「利用の円滑化」では、地域福利増進事業の対象事業などを見直した。同事業は、自治体や民間企業が所有者不明土地に公園や防災空地などの公益性の高い施設を整備できるようにする制度。自然災害の激甚化を背景に、備蓄倉庫などの災害関連施設や、再生可能エネルギー発電設備をメニューに加えた。

 購買施設や災害関連施設、再エネ発電設備などは、土地使用権の上限期間を10年から20年に延長。採算を確保しやすくする。このほか、損傷・腐朽が進む建物が立つ所有者不明土地も対象とし、都道府県知事の裁定で建物を除却可能とした。

 同事業は2019年にスタートしたものの、整備事例は22年11月時点で新潟県粟島浦村の防災空地のみ。国交省不動産・建設経済局土地政策審議官部門土地政策課の米田翔一国土調査企画官は、「使い勝手の良い制度にする必要がある」と語る。