国土交通省は建築確認や構造計算適合性判定(適判)などの行政手続きで求めていた押印(認め印)を、2020年内にも廃止する方向で検討を進めている。政府が進める規制改革の一環。省令を改正し、規定や様式を見直す。11月16日に改正省令案への意見公募を開始した。期間は12月16日まで。改正省令は12月下旬に公布・施行する予定だ。
政府が進める規制改革は、「書面主義、押印原則、対面主義」が求められているすべての行政手続きの原則デジタル化を掲げる。“脱はんこ”はその第1弾となる。
内閣府が取りまとめて11月13日に公表した資料によると、全府省が所管する約1万5000件の手続きで押印の廃止が検討されている。引き続き押印を求めるのは、印鑑証明などが必要な83の行政手続きに限る。国交省の所管で押印を存続させるのは、小型船舶や自動車の登録関連手続きのみ。建築関連の押印は「原則廃止」とする方針だ。
建築士法改正で「IT重説」推進
見直し対象は、建築基準法と建基法施行規則に基づく手続きだけでも211件ある。建築確認や適判から完了検査結果の報告、定期調査の結果報告まで幅広い。建築士法に基づく手続きでは、業務報告書(士法23条の6)が対象だ。耐震改修促進法や建築物省エネ法、建設業法に基づく手続きなども対象となる〔図1〕。
民間における書面や押印、対面規制などの見直しについても検討が進む。建築士法20条に基づく設計図書への記名押印について国交省は「押印の廃止で実務上支障が生じることがないか、関係団体や有識者などに確認しつつ検討を進め、結論を出したい」などとする。
建築士法が義務付ける発注者への重要事項説明(重説)も俎上(そじょう)に載る。国交省は6月から、対面ではなくテレビ会議システムなどを用いた「IT重説」の社会実験を進めてきた。今後、実験の結果や有識者などとの議論を踏まえて本格運用に移行する。
説明時に交付する書面の電子化などについては、「建築士法の改正が必要」(国交省)になる。政府が21年の通常国会へ提出予定の「デジタル化関連一括法案」で改正する可能性がある。