全746文字

 熊本県は、熊本地震震災ミュージアム中核拠点施設の基本設計者を選ぶ公募型プロポーザルで、大西麻貴+百田有希/o+h(東京都中央区)と産紘設計(熊本市)の2社によるJV(設計共同体)を最優秀賞に選定した〔図1〕。

〔図1〕3枚の大屋根を架ける
〔図1〕3枚の大屋根を架ける
最優秀賞に選ばれたのは、阿蘇の雄大なランドスケープに呼応する、大地と空につながる施設の提案だ。熊本県は整備事業を、くまもとアートポリス事業と位置付ける(資料:大西麻貴+百田有希/o+h・産紘設計JV)
[画像のクリックで拡大表示]

 同県は、2016年4月に発生した熊本地震の記憶や経験、教訓を後世に伝承する「震災ミュージアム」の整備に取り組んでいる。“フィールドミュージアム”の考え方を採り入れ、県内の広範囲に点在する震災遺構や地震の痕跡そのものを展示物とする計画だ。それらを地域の拠点などとつないで巡る「回廊型」のネットワークを構築する。プロポーザルでは、その中核拠点となる体験・展示施設の設計者を公募した。

 対象地は、震災遺構として保存する東海大学阿蘇キャンパス(南阿蘇村)の敷地。地震で出現した断層と、その直上に立つ1号館の被害が同時に見える〔写真1〕。プロポーザルの仕様書では、計画条件として施設規模を2階建て以下、延べ面積1300m2で、原則木造とした。

〔写真1〕生きた震災遺構を活用
〔写真1〕生きた震災遺構を活用
建設予定地である東海大学阿蘇キャンパスの現況写真。1号館と断層は被災当時の姿で保存。熊本地震から得た教訓や自然の驚異などの様々な情報を発信する(写真:熊本県)
[画像のクリックで拡大表示]

 41件の応募があり、2月11日に公開二次審査を実施。約300人の参加者が見守る中、5チームがプレゼンテーションと質疑応答を行った。

阿蘇の風景を切り取る

 最優秀賞案の設計コンセプトは「阿蘇の風景に呼応する屋根」。眺望に合わせてゆるやかにカーブする3枚の大屋根を、敷地を横切るように架ける。それにより、周囲の阿蘇の風景を切り取るプランだ。駐車場から体験・展示施設、震災遺構へと続く回遊性を重視し、複数の展示空間をスロープでつなげる。

 審査員長の伊東豊雄氏は「阿蘇の麓特有の雄大な自然に対して最もその地形に沿った提案であることを高く評価した」と講評する。

 事業費は約15億円を見込む。県は20年度に設計を終え、21年度に着工、22年度春の開館を目指す。