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 環境性能が高いオフィスの普及に弾みがつきそうだ。第一生命保険は4月から、不動産運用の投資基準にESG(環境・社会・企業統治)の要素を組み込んだ。環境認証の取得物件や木材を利用した物件などに投資しやすくする。

 6月16日、同社は新しい投資基準の適用第1号を発表した。2025年以降の竣工を目指し、同社が東京都中央区で開発するビルだ〔図1〕。地下2階・地上12階建てで、延べ面積は約1万6000m2、高さは約56m。オフィスや店舗が入る。清水建設が設計・施工を手掛ける予定だ。

〔図1〕適用第1号は木造オフィス
〔図1〕適用第1号は木造オフィス
木造ハイブリッド構造のビルの外観イメージ(資料:第一生命保険、清水建設)
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 鉄骨(S)造と木造を組み合わせた構造で、柱や梁の一部に約1000m3の木材を使用。同規模のS造の賃貸オフィスビルと比べて建設に伴う二酸化炭素(CO2)排出量を20%以上削減する。

CASBEEやLEEDなどが対象

 第一生命保険はこれまでも環境面や社会面に配慮した不動産の運用を進めてきた。例えば、同社が東邦銀行と共同で宇都宮市に建設する、木造ハイブリッド構造のオフィスの開発計画を20年11月に発表した。

 既存ビルの取得や新規の不動産開発を実施するか判断する上では、投資の基準となる利回りを指す「ハードル・レート」を設定。従来は、用途や立地、面積、築年数、所有形態などを踏まえて算定していた。

 第一生命保険はハードル・レートの算定プロセスに、環境性能に関する認証の取得状況を加えた。対象は国内のオフィスに限定。認証取得物件ではハードル・レートを低くする。

 認証とは、日本政策投資銀行(東京都千代田区)が創設した「DBJ Green Building認証」や、国土交通省の主導の下で開発が進んだ「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)」、米国発の環境性能認証制度「LEED(リード)」の3つだ。

 これらの認証を取得していなくても、木造化・木質化したビルではハードル・レートを引き下げる。認証取得物件と同様にCO2削減効果が期待できるからだ。

 また、利用者の健康に配慮した建築を評価する米国発の認証制度「WELL Building Standard(ウェルビルディングスタンダード)」(WELL認証)の取得などESGの要素と関係がある物件については今後、案件ごとに引き下げを検討する方針だ。

 第一生命保険は20年、日本不動産研究所(東京都港区)やCSRデザイン環境投資顧問(東京都千代田区)の協力を得てESGの要素と収益性の関係を調査した。国内にある約1000棟のオフィスのうち、DBJ Green Building認証、CASBEE、LEEDのいずれかを取得している約300棟では、そうした認証を取得していない物件と比較して賃料が高かった。

 第一生命保険不動産部不動産企画課の渡辺隆文マネジャーは、「木造や木質化したビルはまだ事例が少なく、分析できていないもののESGの要素があると判断し評価に組み込んだ」と話す。