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 1945年の広島原爆投下から75年。被爆建物として有名な「広島アンデルセン」(広島市)の建て替え工事が完了し、新店舗が2020年8月1日に開業した〔写真1〕。地上5階建ての建物東面に、旧店舗の被爆した外壁の一部を移設。2~3階の外壁を復元し、従前の外観を維持した。

〔写真1〕建て替え後も変わらぬ外観
〔写真1〕建て替え後も変わらぬ外観
外装材を保存して建て替えた広島アンデルセン新店舗。2~3階の外壁を復元し、従前のルネサンス様式の外観を維持した。アーケードに面しているのが北面。写真左側の東面の中央に被爆した外壁を一部再利用した(写真:建築写)
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 広島アンデルセンの旧店舗は、1925年竣工、鉄筋コンクリート造の元銀行だった。45年8月、爆心地から約360mの距離で被爆。アンデルセングループの創業者が建物を買い取って67年にベーカリーを開業した。その後、耐震性能の不足などで2016年に閉館。被爆建物としての在り方を約2年半かけて検討した。

 広島市は1993年から、爆心地から5km以内に現存する被爆した建物を「被爆建物」として登録している。広島アンデルセンでは被爆時の状態がよく分かる外壁を「部分保存」。被爆建物としての登録が継続される。アンデルセングループの「被爆建物を使い続けることで、被爆の記憶の保存・継承に貢献し続けたい」という思いが実現した。

被爆壁を“PCa版化”

 設計・施工を担当した大成建設は外壁の再利用方法を探るため、既存外壁の強度を調べた。躯体の圧縮強度は低く、耐震補強などで全体を保存することが難しいことが分かった。一方、外装材は、コンクリートや砕石などを圧縮成形してつくった厚さ65mmの人造石ブロックで、十分な強度があった。そこで、人造石部分を残してPCa(プレキャストコンクリート)版化することにした。

 PCa版化する過程で人造石が損傷しないよう、表面に剥離剤を施し、保護コンクリートを打設〔写真2〕。裏面に補強用の鉄筋コンクリートを設置した後、水を浸透させて剥離剤を溶かし、保護コンクリートを分離した。人造石に損傷はなく、新築の建物に取り付けることができた。

〔写真2〕コンクリートで保護してPCa版化
〔写真2〕コンクリートで保護してPCa版化
外装材の表面に、水溶性の接着剤と砂を混ぜた剥離剤を設置。この上に保護コンクリートを打設し、既存の鉄筋コンクリートを一部撤去。鉄筋コンクリートを新たに打設してPCa版化した。大成建設はこの工法について特許を出願済みだ(写真:大成建設)
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