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 2018年7月の西日本豪雨で損傷した山口県岩国市内の「久杉(くすぎ)橋」の架け替え事業で、隈研吾氏がデザインを手掛けることになった。

 日本酒「獺祭(だっさい)」を製造・販売する地元の旭酒造(岩国市)が隈氏の事務所に依頼した。デザインの反映に必要な1億4000万円の追加費用は、旭酒造が負担する。同社や県などが10月28日の会見で新橋のデザインを公開した〔図1〕。

〔図1〕旭酒造が1億4000万円を負担
〔図1〕旭酒造が1億4000万円を負担
隈研吾氏が手掛けた新しい久杉橋のデザイン。(資料:隈研吾建築都市設計事務所、旭酒造)
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西日本豪雨で被災した旧・久杉橋。大量の流木が押し寄せて桁や高欄が変形した(写真:山口県)
西日本豪雨で被災した旧・久杉橋。大量の流木が押し寄せて桁や高欄が変形した(写真:山口県)
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 被災した久杉橋は、山口県が1954年に整備した橋長15mの鉄筋コンクリート(RC)橋。旭酒造の直売所の目前に架かっていた。西日本豪雨の際に流木や土砂が河川に流れ込み、桁に衝突。高欄が折れ曲がるなど大きな被害が出た。県は橋桁を撤去し、仮設の桁を架けて応急復旧。被災前と同じ形式で再建を計画していた。

 しかし、計画を知った旭酒造や地元住民が、久杉橋を復興の象徴にしたいと要望。過去に同社の直売所を設計した隈氏のデザインを盛り込むよう提案した。県は2019年3月、建設費の増分を旭酒造が負担することを条件に、要望を認める覚書を同社などと締結した。同社は総事業費の約3億2000万円のうち、4割強を支払う。橋の完成後は、岩国市が管理を担う。

800本以上の県産ヒノキ材

 新橋の橋長は20.8mで旧橋より5m長くなるため、プレストレスト・コンクリート(PC)橋とした。

 最大の特徴は、高欄に沿って配置する長短800本以上の県内産のヒノキ材だ。橋の端部から中央部に向かうにつれて角材を長くし、側面から見ると山なりのカーブを描くようなデザインとした。

 さらに、幅員を1.5m広げて6.5mとし、旧橋には無かった歩道を整備する。橋を歩いて渡りながら、ヒノキ材越しに広がる山並みの変化などを楽しめる。

 旭酒造の桜井一宏社長は、「災害の記憶を忘れないようにしつつ、前向きな復興にしたかった」とする。

 橋の取り付け部はかさ上げして、河川構造令が規定する桁下高を確保し、流木の流れを阻害しにくくする。県は22年3月の完成を目指している。