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 工学院大学と能美防災(東京都千代田区)は、水と無機物を成分とする高粘度液体を用いた消防技術を共同開発した〔図1〕。発表は2019年11月29日。液体を燃焼面に付着させて空気を遮断し、火災拡大を抑制する。研究開発の背景には、多発する歴史的建造物の大規模火災がある。

〔図1〕高粘度液体の効果を実大模型の燃焼実験で確認
〔図1〕高粘度液体の効果を実大模型の燃焼実験で確認
右の表は燃焼抑制実験の結果。燃え上がる模型に高粘度液体と水をそれぞれ約20秒間散布した後に送風し、経過を観察した(写真:左上は工学院大学、左下は日経アーキテクチュア、資料:工学院大学)
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 両者が着目したのは、高粘度液体の「チキソ性」。力が加わらない状態ではゲル状に、力を加えると液状に変化する性質だ。スプレーで噴射したり圧送したりする際は液状で、付着時にゲル状に変わる。建物などに付着しても、水で洗い流せば跡が残らない。

 高粘度液体が特に有効なのは、かやぶき屋根の火災だ。一般にかや材の内部に入り込んだ火や熱で火災が拡大する「もぐり込み火災」は消火が難しい。消防活動を終えて水の散布を止めた後に燃え上がり、大火へ発展することがある。ゲル状の高粘度液体であれば、流れ落ちずその場にとどまるので、噴射し続けなくても火災の拡大を防止できる。

 初期消火での活用を狙い、高粘度液体の噴射装置も開発した。大人1人で運搬・噴射できる。文化財の防火対策として知られる放水銃は、大量の水の確保と配管の敷設が必要で、導入が難しい地域が多いが、開発した装置なら導入しやすい。