全801文字
PR

 三井住友建設は、木製の梁にPC鋼材を貫通させてプレストレス(緊張力)を導入する「プレストレスト木質構造」の設計法を確立した。梁にプレストレスを導入することで、たわみを抑え、同じ断面でもスパンが伸ばせる。最大スパン11mを確保し、大空間と外周部に壁のない開放的な空間を木質構造で実現する〔図1〕。

〔図1〕プレストレスト木質構造で大スパンを確保
〔図1〕プレストレスト木質構造で大スパンを確保
プレストレスト木質構造を採用した建物のイメージ図。梁にプレストレスを導入することで11mの大スパンを可能にした。用途は、事務所と食堂を想定する(資料:三井住友建設)
[画像のクリックで拡大表示]

 木材は繊維の直角方向の圧縮力に弱いため、木製の柱に木製の梁を取り付けると、梁が柱にめり込んで変形が生じる。同社は、柱と梁の接合部を鉄筋コンクリート(RC)とすることで、めり込みなどの残留変形が生じにくくなるよう工夫した〔図2〕。

〔図2〕柱と梁の接合部にはRCを採用
〔図2〕柱と梁の接合部にはRCを採用
プレストレスト木質構造の柱梁接合部にはRCを採用する。柱は鉄筋で剛接合。木製の梁とRCの接合部をPC鋼材で貫通してプレストレスを導入する(資料:三井住友建設)
[画像のクリックで拡大表示]

10分の1層間変形でも復元

 木製の梁とRCの柱梁接合部にPC鋼材を貫通させて緊張することで梁が柱に圧着。大地震時にフレームが大きく変形しても、PC鋼材によるプレストレスが元の位置に戻す力を発揮する。実験では、層間変形角10分の1程度まで最大耐力を保持し、地震後にほとんど残留変形がない復元機能を有することを確認している。実際の設計では、大地震時の層間変形角100分の1程度を採用するが、想定を超える地震が発生した場合、建物フレームとしては残留変形が少なく、部分的な補修で継続して使用することができるメリットがある。

 このほか、プレストレスを導入した木質部材の構造性能試験や梁の曲げ耐力試験などを実施。柱と梁の接合部の構造性能評価を行い、実用化のための設計法を確立した。

 同社が試験的に設計したのは、地上2階建て、延べ面積約2500m2、最大高さ11m、最大スパン11mの建物だ。梁に導入するプレストレスは部材の圧縮強度における15%程度で、断面寸法は480mm×650mm程度である。

 今後、同社の施設でプレストレスト木質構造を採用して、設計法や施工法をさらに整備する方針だ。地球環境への配慮から木材資源の活用が注目される中、この工法を中大規模建築に採用されるよう働きかける。