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 ソニーが「音のVR(仮想現実)」の拡販に本腰を入れ始めた。音のVRとは、複数のスピーカーを使って未知の音響体験ができる技術だ。

 一言でいうと、ある空間内の決められた位置に「音を置く」。あたかもその場所に音源があるかのような演出を可能にする。ソニーはこれを「Sonic Surf VR(SSVR)」と呼ぶ。音の波面を合成し、音を置きたい場所に音圧を集中させる技術である。

 四角い部屋なら、4つの壁の一面にSSVR対応スピーカーを並べるだけで、部屋のあちこちに音源があるような環境(音場)をつくれる。スピーカーがない場所から音が聞こえてくるような感覚を味わえる〔写真1〕。

〔写真1〕空間内に音を自在に配置できる
〔写真1〕空間内に音を自在に配置できる
3月に「Touch that Sound!」というイベントでSSVRを使った空間音響作品を一般公開した。スピーカーは写真左手に細長いものが1台あるだけ (写真:リットーミュージック)
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 スピーカーを一面だけに設置すればよいとなれば、音を扱う空間設計は大きく変わってくる。「仮想スピーカーによる音の箱庭づくり」と、ソニーテクノロジーアライアンス部コンテンツ開発課の戸村朝子統括課長は表現する。

 ソニーは2018年6月にSSVRの販売を開始。ただし、テーマパークや美術館、水族館、ショールーム、商業施設、ライブ会場といった法人や公共施設向けの音響設備なので、これまでは限られた人しか体験できなかった。そこで5組のアーティストに空間音響作品の制作を依頼。19年3月に一般公開した。

 ソニーは8チャンネルを1ユニットにして、SSVR対応のスピーカーを開発している。今回は16台をつなげて、128チャンネルにした。

音場を分けて多言語対応

 SSVRの使い道で注目すべきは多言語対応だ。長いスピーカーを左、中央、右で3分割し、例えば日本語、英語、中国語で同じ内容のアナウンスを流す。普通なら3つの音が混ざり合い、全ての言語が耳に入ってきて聞き取りにくい。

 しかしSSVRで音場を3つに分ければ、1本のスピーカーで位置によって聞こえる言語を変えられる。

 するとスピーカーの前にいる人は何の指示がなくても「自分が理解できる言語の前に集まったり、並びだしたりする」(戸村統括課長)。つまり、音で人の流れや動線をコントロールできる可能性がある。

 音場の分割を体験してみると、まるで空間内に「見えない壁(仕切り)」があるように感じる。自分がいるゾーンでは、特定の言語しか聞こえてこないからだ。東京五輪など、大勢の人が集まる場所で、多言語対応は役立ちそうだ。

 価格は128チャンネル構成で、機材レンタルが1カ月で170万円。購入する場合は、音声データと電力を供給するハード、音場をデザインするオーサリングソフトが必要になり、一式で590万円だ。