三井住友建設は、シーソーのように揺れる機構を活用した制振システム(揺動制震システム)の実物大での検証を行い、実用化にめどを付けた〔写真1〕。広島大学大学院工学研究科建築学専攻の田川浩教授と共同で開発している。
揺動制震システムは、多層階の揺れを一括して制御する仕組みだ。構成は、建物の多層階にわたって架設する「タイロッド部」、地震時の揺れを吸収する「制振ダンパー部」、制振ダンパーを安定して作動させる「揺動機構部」の3つから成る。
タイロッド部を多層階に架けわたすことで各階の変形を揺動機構部に集め、制振ダンパーを有効に機能させる。各階の水平方向の変形を揺動機構部がシーソーのような仕組みで上下方向の動きに変換し、制振ダンパーを変形させる〔図1〕。
実験に用いた試験体は、長辺方向5mを2スパン、短辺方向5mを1スパン、階高3mを3層とした架構だ。鉄骨造5階建ての倉庫のうち、3層分を想定している。試験体の屋上に起振機を設置し、長辺方向に加振。揺れを抑える効果を確認した。
粘性系や鋼材系を選べる
建築主の要求に応じて、制振ダンパーを選ぶことができる。例えば、建築主が非常に高い耐震性を求めている場合はコストよりも性能を重視し、粘性系などの高性能な制振ダンパーを選択する。一方、建築主が高い耐震性よりもコストを重視している場合は、鋼材系で低コストの制振ダンパーを採用することができる。
揺動制震システムでは、多層階にわたって設置するのは細いタイロッドなので場所を取らない。新築の場合、建物内部に設ける吹き抜けや縦方向に空間を設けるコア部分を利用して、タイロッドを設置することを想定する。一方、改修の場合は、建物のメインフレームから張り出した部材を設け、そこに揺動制震システムを設置することを想定している。
三井住友建設は倉庫や工場、生産施設などの新築や改築時に、揺動制震システムの導入を提案していく。従来の制振構造に比べて制振ダンパーの設置数を減らせるので、コストを抑えたり、同等のコストで高い制振性能を確保したりできる。