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 三井住友建設は、ワイヤレス振動センサーを用いて構造物の損傷を検知する「即時異常検知システム」を開発した。地震発生時に建物の損傷やひび割れなどの異常を自動で検知して、建物利用者の安全確保に役立てる。7月3日に発表した。

 このシステムは、地震による構造物の揺れの加速度を計測・分析し、固有振動数の低下を捉えることで、構造物に異常が発生しているか判定する。固有振動数は構造物の剛性を反映した指標なので、損傷が発生した場合に値が大きく低下する。

 固有振動数の変化を捉えるためには、地震時だけでなく平常時にも値を算出しておく必要がある。風や周囲を走る車などによって生じる構造物の微少な振動を検知して、平常時にも固有振動数をモニタリングする。設計時の資料がない既存建物でも、即時異常検知システムを導入すれば固有振動数の変化から建物の異常を把握できるのが特徴だ。

 三井住友建設は、3階建て鉄筋コンクリート(RC)造の実大構造物による加振実験によって即時異常検知システムの有効性を確認〔写真1〕。同システムは、加振後の実大構造物の異常を検知できた。実験はE-ディフェンスで実施。防災科学技術研究所が取り組む「首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上プロジェクト」の一環だ。

〔写真1〕E-ディフェンスで加振実験
〔写真1〕E-ディフェンスで加振実験
三井住友建設は、防災科学技術研究所の兵庫耐震工学研究センター(兵庫県三木市)の振動台(通称:E-ディフェンス)で2019年12月に実施された加振実験に付加計測チームとして参加。即時異常検知システムの有効性を確認した(写真:三井住友建設)
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 三井住友建設は、橋梁や長崎県の軍艦島の建物にも異常を検知するシステムを導入した実績はあったが、構造物が壊れたことを検知できるか実験で確認する必要があった。

 実験では、加速度センサーのほかに、加速度データを分析して振動数を求める小型のコンピューターや、振動数のデータを無線で通信する装置を使用した。

 これら3つの機器を1つの箱に収納して、実大構造物の14カ所に配置。箱の大きさは、縦・横175mm、高さ75mmだ。各箇所の振動のデータを無線通信で集約し分析することで、固有振動数を算出する。

応急危険度判定士不足に対応

 今回の実験では揺れが収まってから異常を検知するまでの時間が10分ほどだった。三井住友建設は、地震発生後に自動で異常の有無を判定することで、建物の中に残っている人が避難すべきか判断する際などに役立てる考えだ。

 同社技術本部第三構造技術部の川島学主任研究員は、「応急危険度判定士の不足が社会問題になっている。この技術が解決策の1つだ」と話す。ただ、開発したシステムはひび割れや小さな損傷でも検知できるため、どの程度の異常から通知を出すべきか検討する必要があるという。