清水建設は、カメラ画像から火災を検知するAI(人工知能)と、IoT(モノのインターネット)による消火装置の制御技術を組み合わせた新たな防災システム「慈雨(じう)」を開発した。火災の早期発見と、出火部位に的を絞った放水で、文化的価値の高い伝統木造建築物の防火対策を強化する。8月29日に発表した。
「慈雨」では、AIがカメラ画像から炎や煙、人の不審な動作を自動判別機能で分析する〔図1〕。30m先にある7cm角の範囲を検知し、火災の早期発見や放火防止に役立てる。加えて、出火部位に限定した放水により、限られた消火用水でも効果的に消火できるようにした。放水銃には扇形の放水ノズルを装着し、水圧による建物の損壊リスクを軽減した。
従来の防火システムの多くは、物体の燃焼時に発生する炎の放射エネルギーと光のちらつきを炎センサーで検知していた。このセンサーは、30m先にある15cm角の範囲までしか検知できず、ある程度大きな炎にしか反応しなかった。また、消火時には敷地内の消火装置が一斉に稼働するため、消火用水の容量不足が問題になっていた。