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 2024年中に建築の全現場をスマート化し、生産性を3割向上させる──。鹿島は建設現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する「鹿島スマート生産ビジョン」を発表した18年以降、ロボットなどを導入した2つのモデル現場を公開してきた。22年12月12日には、約2年ぶりに3つ目となるモデル現場を報道陣に公開した。

 公開したのは、さいたま市のJR大宮駅付近で工事が進む「大宮桜木町1丁目計画」の現場。鉄骨(S)造の複合ビルで、地上13階建て。延べ面積は約2万700m2だ。鹿島が設計・施工を担当している。21年10月に着工し、竣工は23年5月を見込む。

新型ロボで準備の負荷を軽減

 目を引いたのは、耐火被覆吹き付けロボット。現場での使い勝手を改善した新型を披露した〔写真1〕。水圧式の昇降ポールを備えた本体にロボットアームを搭載し、横移動などをしながらアーム先端のノズルで材料を吹き付けていく。

〔写真1〕BIMデータ入力を現場スキャンに変更
〔写真1〕BIMデータ入力を現場スキャンに変更
鹿島が開発を進めてきた耐火被覆吹き付けロボット。上が旧型で下が新型だ。小型・軽量化した見た目の変化もさることながら、現場での使い勝手を大幅に改善した。ロボットに搭載した3次元レーザースキャナーで梁部材を認識し、形状に応じてロボットアームを動かす(写真:2点とも日経アーキテクチュア)
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 最も進化した点の1つは、梁形状の認識方法だ。20年11月に報道公開した2つ目のモデル現場「横濱ゲートタワー」(横浜市)で導入していた旧型では、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)のデータを使って梁の形状などを入力しており、事前準備の負荷が大きかった。新型では、ロボットに搭載した3次元レーザースキャナーで梁の形状を認識するシステムに変更。現場にロボットを配置して作業前にスキャンするだけで済むので、準備の負荷を大幅に削減できた。

 今回のモデル現場ではその他、初めて実導入した墨出しロボットやシステム天井施工ロボット、改良を重ねてきた自動搬送システムなど、計19項目の新技術を取り入れている。

 スマート生産を推進する鹿島建築管理本部副本部長の伊藤仁専務執行役員は、「必要な建設ロボットの開発には、ほぼ着手済みだ。残りの2年は、機能性や操作性などを高めるフェーズへ移る」と語った。