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新築マンションの地下躯体工事が完了して間もなく、隣地建物に入居する飲食店のトイレで汚水が逆流した。隣地建物の所有者が建設会社を訴えた裁判は、建設会社にどこまで責任が及ぶかが争点となった。(日経アーキテクチュア)

マンションの建設工事中、隣地に立つ建物で汚水逆流事故が発生した。建物の排水管と屋外排水管の接合部が破断、汚水が阻害されたためだった。発注者や建設会社とは関係のない、第三者の被害はどのように裁かれるのか
マンションの建設工事中、隣地に立つ建物で汚水逆流事故が発生した。建物の排水管と屋外排水管の接合部が破断、汚水が阻害されたためだった。発注者や建設会社とは関係のない、第三者の被害はどのように裁かれるのか
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 建て替え工事では思わぬ問題に直面することが多々ある。今回取り上げるトラブルは、掘削工事と地下構造物の建設が完了してから2カ月後になって、隣地建物で汚水逆流が発生したというものだ。

 概要から見ていこう。被告の建設会社は2014年から15年にかけ、東京都内のビル所有者からマンション建設の発注を受けた。ビルを解体・撤去し、鉄筋コンクリート(RC)造、10階建てのマンションを建設するというもので、設計・工事費は約23億3600万円に上った。

 工事は既存杭の撤去を伴うもので、建設会社は15年11月までに新設杭の打設と地下構造の工事を完了させた。地盤掘削に当たっては、隣地との境界に親杭を打ち込み、親杭の間に横矢板を入れる山留め工事を行っていた。

 16年1月、隣地建物の1階に入居していた居酒屋店舗で、トイレの排水口から汚水が逆流していることが判明した。隣地建物の排水管と屋外排水管を結ぶ接合管が破断、汚水が行き場を失ったためだった。居酒屋は休業を余儀なくされた。

 このトラブルが隣地建物の所有者と建設会社の紛争に発展した。隣地建物の所有者は16年に、建設会社を相手取り、補修費など約400万円の賠償を求めて東京地方裁判所へ提訴した〔図1〕。

〔図1〕隣地の排水管は長くメンテナンスされていなかった
〔図1〕隣地の排水管は長くメンテナンスされていなかった
事件の概要。地下躯体工事が完了して間もない時期に、隣地建物で排水管の破断事故が発生、新築工事との因果関係が争点となった(資料:取材と判決文を基に日経アーキテクチュアが作成)
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