コロナ禍で落ち込んだ建築需要が回復傾向にある。国土交通省が2022年1月31日に発表した建築着工統計によると、21年の建築需要は前年比7.5%増だった。とはいえ、用途によって濃淡があるのも事実だ。(日経アーキテクチュア)

建築物着工床面積(建築需要)は2020年、コロナ禍などの影響で前年比10.8%減と落ち込んだ。その後、ワクチン接種率の上昇などを背景に民間設備投資が上向き始め、21年の建築需要は20年比7.5%増の1億2224万m2まで持ち直した。ただし、22年に入ってからはオミクロン株が急拡大して感染者数が増加し、経済活動は足踏み状態となっている。
コロナ禍が設備投資に与える影響は業種により大きく異なる。建築需要の推移も業種(用途)別に「K字」を描いており、二極化が鮮明だ。
活況を呈するのは電子商取引(EC)関連の施設。物流施設(倉庫)の建築需要は2年連続で2桁台という高い伸び率を誇る。一方、コロナ禍の影響を被ったのが対面型ビジネスで、飲食業や旅行業などに関係するホテル、小規模店舗は依然として低迷から抜け出せていない。足元の感染状況を見る限り、今年も「K字形市場」が続く可能性が高いだろう。
建築市場では受注競争が厳しさを増しており、その上、資材価格の高騰が建築コストを押し上げている。その結果、工事の採算性は急速に低下しつつある。
法人企業統計調査によると、建設業の売上高営業利益率は08年度のリーマン・ショック時に1%と低迷していたが、16年度には4.6%まで回復し、以降も高水準を維持してきた。しかし、今後は3%台に低下する公算が大きいとみる〔図1〕。