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引き渡し直前の建物を巡り、元下間で工事代金のトラブルが発生するなか、開業を急ぐ建築主が強引に建物の供用を開始した──。下請けの建設会社が建築主に建物の明け渡しを求めた、異色の裁判を解説する。(日経アーキテクチュア)

工事費が膨れ上がるなか、元請け会社からの代金支払いがストップした。下請けの建設会社は建物を完成に導いたが、代金清算は道半ば。この状況で建築主が建物に乗り込み、建物出入り口の鍵にカバーを付けて「関係者以外立ち入り禁止」を宣言してしまった。下請け建設会社と建築主が訴え合った異色の裁判だ
工事費が膨れ上がるなか、元請け会社からの代金支払いがストップした。下請けの建設会社は建物を完成に導いたが、代金清算は道半ば。この状況で建築主が建物に乗り込み、建物出入り口の鍵にカバーを付けて「関係者以外立ち入り禁止」を宣言してしまった。下請け建設会社と建築主が訴え合った異色の裁判だ
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 今回取り上げる判決は、元請け・下請け間の代金トラブルを発端として、下請けが発注者である建築主を訴えた事件を巡るものだ。

 概要を説明しよう。問題となったのは、関東圏で実施されたカプセルホテルの新築工事だ。建物は9階建てで、延べ面積1000m2をやや上回る規模とみられる。

 この計画ではまず建築主(被告)が元請け会社(訴外)に建設工事を発注、続いて元請け会社が建設会社2社の特定建設工事共同企業体(原告、下請けJV)と建設工事請負契約を締結した。なお建築主と元請け会社間の契約内容は不明だ。

 元下間の工事請負契約が締結されたのは2015年5月。工事代金は約4億7700万円で、着工時に元請け会社が1億7100万円を支払い、残りは出来高を毎月末締めして、各30日以内に支払うことになっていた。