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桜の花の季節ににぎわう観光庭園で、来場者が転倒して骨折した。所有者が訴えられた裁判で、裁判所は「自然地形を生かした庭園にも工作物責任はある」と判示した。ランドスケープ設計の注意点とは。(日経アーキテクチュア)

転倒事故の責任をとれ! 通路に20%もの急勾配があるのに、砂利をまいただけの状態で放置していた。転んで骨折したのは施設側に不備があったせいだ
桜の花や紅葉を楽しむ有料の観光庭園で、来場者が転倒・骨折した。自然の地形を生かし、人為的な整備を最小限にとどめていたが、転倒した来場者は施設側に工作物責任があるとして治療費や慰謝料など約360万円の賠償を求めて提訴した
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 今回、取り上げるのは、有料の観光庭園での転倒事故を巡る裁判だ。

 この庭園は桜の花や紅葉が楽しめる季節に限り、有料で観光客に庭園を開放している。桜の時期は約1カ月で3万人以上が訪れ、この時期だけで4000万円以上の入園収入がある人気スポットだ。

 原告となった女性(当時64歳)は2014年4月11日、花見を楽しもうと、夫の男性と2人連れでこの庭園を訪れた。昼ごろから園内をひとしきり見て回った後、午後4時すぎに出口へ向かった。その帰り道で転倒、右足関節外果骨折のけがを負った。

 入院日数は38日間に及び、その後も1年以上にわたって通院を余儀なくされた上、足の痺れなど後遺症も残った。女性は15年ごろ、庭園を管理・運営する所有者を相手取り、工作物責任(民法717条)に基づき治療費など約360万円の賠償を求め、東京地方裁判所へ提訴した〔図1〕。

〔図1〕帰り道の下り坂で転倒し、1カ月以上入院
2014年4月11日昼ごろ当時64歳の女性(後の原告)が、夫の男性と共に問題の観光庭園を来訪。東口から入園し、小高い丘を切り開いた庭園の広場を目指した
午後4時すぎ広場から東口への帰途の下り坂で原告が転倒。右足関節外果骨折のけがを負った。入院加療に38日間を要し、その後も足がしびれるなどの後遺症が残った
15年ごろ原告が所有者を相手取り、治療費や慰謝料など約360万円を求めて東京地方裁判所へ提訴。請求の主な内訳は、直接の治療費約60万円、傷害慰謝料120万円、後遺障害慰謝料110万円、弁護士費用60万円など
17年10月6日1審判決。東京地裁は原告の訴えを退けた。原告は控訴した
事件の経緯。原告は転倒で1カ月以上の入院を余儀なくされ、後遺症も残った(資料:判決文を基に日経アーキテクチュアが作成)

 この裁判の争点はシンプルだ。事故が起こった庭園内の通路が「土地の工作物」に該当するか、さらに所有者または占有者に通路の「設置または保存に瑕疵(かし)」があったか、という2点が争われた。被告の施設側は全面的に争った。

工作物責任こう判断される

 この観光庭園は自然に親しみ、自然の地形の中で桜や紅葉を鑑賞することを狙いとしている。過度に通路を舗装したり、手すりを設置したりすれば、景観を損ね、価値が失われかねない。

 過去の裁判例ではこうした自然の地形を利用した観光施設について、「観光という目的に供されていたからといって、必ずしも工作物責任を負うというものではない」(広島地裁呉支部1979年4月25日判決)とされてきた。つまり所有者などに責任があるかどうかも個別具体的に判断する必要がある。

 東京地裁は庭園の概況から工作物責任を問えるかを判断した。判決文の事実認定を見ていこう。