PR

損害賠償請求は可能

 地方自治には「住民自治の原則」があり、住民意思の変化により、過去の決定が覆ることはあり得る。最高裁は過去の判例でこう示した。

 「いわゆる住民自治の原則は、地方公共団体の組織及び運営に関する基本的原則であり、また、将来にわたって継続すべき施策を決定した場合でも、右施策が社会情勢の変動等に伴って変更されることはもとより当然であって、地方公共団体は原則として右決定に拘束されるものではない」(1981年1月27日判決)。選挙結果を受けた新市長による行政処分が是認されたのは、この原則に沿うものだといえる。

 首長交代による都市計画の見直しは、過去に例のない話ではない。ただし、白紙撤回は甚大な影響を及ぼすだけに、利害関係の対立から紛争となるのが常だ。自治体には、変化を当然のこととして政策変更の弊害を一方へ押し付けるのではなく、損害が生じるのであればその損害に配慮し、丁寧な説明を重ねる姿勢も求められよう。

 本件では組合側が調査設計費や事務所費用などをすでに支出済みで、約5億円の借り入れがある。裁判では、こうした損害について市側も損害賠償の余地を認めている。

 再開発事業は自治体との二人三脚だ。設計者、事業者は政治の行方にも注意を払いながら開発事業を進める必要性がある。

講師:柴田 亮子(しばた りょうこ)
講師:柴田 亮子(しばた りょうこ) 東京工業大学理学部物理学科卒業後、日本電気に入社。2004年にキーストーン法律事務所に入所。建築紛争やマンション問題、医療訴訟、離婚・相続などの家事事件を得意分野としている