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近隣住民のマンション反対運動が続く中、建設会社が工事現場の仮囲いに10台の防犯カメラを設置した。周辺住民がプライバシー侵害に当たるとして訴え出た裁判で、裁判所は建設会社に慰謝料支払いを命じた。(日経アーキテクチュア)

建設反対運動が激化、暴行罪の逮捕者まで出たマンション建設現場で、建設会社が現場の仮囲いに10台の防犯カメラを設置、周辺住民が不動産会社と建設会社を訴えた。裁判が判決に至るよりも先にマンションは完成、防犯カメラは撤去されたが、裁判所は10台中1台が侵害行為に当たっていたとして慰謝料支払いを命じた
建設反対運動が激化、暴行罪の逮捕者まで出たマンション建設現場で、建設会社が現場の仮囲いに10台の防犯カメラを設置、周辺住民が不動産会社と建設会社を訴えた。裁判が判決に至るよりも先にマンションは完成、防犯カメラは撤去されたが、裁判所は10台中1台が侵害行為に当たっていたとして慰謝料支払いを命じた

 工事現場は施錠が難しいことから、資材泥棒、事務所荒らしなどが起こるとも聞く。最近では防犯カメラを設置する場合があるが、周辺住民のプライバシー権侵害には気を付けるべきだ。今回はそうした際の参考になりそうな判決を取り上げたい。

 問題となったのは名古屋市の近隣商業地域、第2種中高層住居専用地域にまたがる約2500m2の敷地で計画された、地上15階建て、全70戸のマンション建設計画だ。2015年10月、不動産会社と建設会社が近隣に案内文を配布して工事を告知したところ、翌11月から反対運動が巻き起こった。

 周辺住民はマンションの階数を減らすよう求め、現場に接する道路の歩道にのぼりを立て、プラカードを持って抗議の意を示した。事業者2社は16年1月ごろ、話し合いの場を求めて名古屋市の条例に基づく調停を申し立てたが、合意が成立する見込みがないとして同年2月に打ち切られた。

 その後、建築確認が下り、工事を始めようとしたが、周辺住民が現場への進入路付近で連日にわたって反対運動を続けたため、工事車両を乗り入れられないなど工事に支障をきたすようになってきた。

 何度も警察を呼ぶ事態となり、住民の1人が暴行罪の疑いで現行犯逮捕されることまであった。住民がダンプカーの前に立ちはだかろうとして、現場担当者と小競り合いになったという(後に無罪判決)。