全2374文字
PR

2021年度の建築物着工床面積は前年度比7.1%増となり、建築需要の回復が見えてきた。一方、ウクライナ危機の影響で原油や資材の価格高騰が加速し、景気の下振れが懸念されている。(日経アーキテクチュア)

 2022年3月の建設資材物価指数(建築部門)は前年同月比19.2%増だった。高騰が顕著な資材は製材(89.8%増)や合板(96.2%増)、鉄鋼(27.4%増)。原油高で、そこに石油製品(16.4%増)も加わった〔図1〕。

〔図1〕建設資材物価指数と為替レートの推移
〔図1〕建設資材物価指数と為替レートの推移
建設資材物価指数は建設物価調査会、為替レートは日本銀行の資料を用いた(資料:サトウファシリティーズコンサルタンツ)
[画像のクリックで拡大表示]

 木材、鉄鉱石、石炭、アルミニウム、銅、ニッケル──。日本は主要な建築資材の原材料の多くを輸入に頼っている。ウクライナ危機がもたらす原材料の高騰が、資材の製造コストをさらに押し上げそうだ。

 とりわけ22年4月時点では、鉄鋼の価格上昇が鮮明だ。鉄鉱石や石炭などの価格上昇を受けて鉄鋼メーカーが値上げに踏み切り、H形鋼は前月比で4%も値上がりした。建物の主要構造部に使用するH形鋼(200×100)の場合、1トン当たりの価格は11万円(東京地区)で、前月よりも4000円も高い。20年の底値から実に48%も上昇した。

 石炭や木材(単板)の禁輸など、ロシアへの経済制裁は長期化が見込まれる。メーカーの値上げ姿勢は今後も一段と強まりそうな気配だ。

 輸入原材料の高騰に拍車をかけているのが、足元で急速に進む円安だ。22年4月28日には、02年4月以来、20年ぶりとなる1ドル=131円台まで円安が進んだ。円安による資材高は建築費の高騰に直結し、建設会社や発注者の負担増につながる。

 日本銀行は円安に歯止めをかけるよりも、金利を低く抑えて景気を支える姿勢を明確にしており、さらに円安が加速する可能性もある。米連邦準備理事会(FRB)はインフレを抑制するため利上げに動いており、筆者は円安・ドル高基調が22年後半まで続くとみている。