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「彼は1級建築士だ」。そんな触れ込みで雇った人物が、実は無資格者だった。不祥事が度重なったこの人物について、無資格だったことが発覚後、原告の不動産会社は報酬全額の返還を求めて提訴した。(日経アーキテクチュア)

素行が悪く、数カ月で辞めていった人物について、実は1級建築士を詐称していたことが発覚した。会社側は好待遇で迎えていたが、裏切られた格好だ。会社側は「詐称は不法行為に当たる」として、支払い済みの報酬全額が損害に当たるとして詐称した人物を訴えた
素行が悪く、数カ月で辞めていった人物について、実は1級建築士を詐称していたことが発覚した。会社側は好待遇で迎えていたが、裏切られた格好だ。会社側は「詐称は不法行為に当たる」として、支払い済みの報酬全額が損害に当たるとして詐称した人物を訴えた

 1級建築士の資格を持たないのに、「有資格者だ」と詐称して採用面接に訪れ、入社してしまう。そんな事案がかつて何件も頻発した時期があった。筆者の依頼者でもそうした事案が発生、建築士法違反容疑で依頼者の会社に警察捜査の手が及んだこともある。

 建築士法に基づけば、建築士事務所の開設者も罰則を受けかねない。本来、会社側はだまされた被害者なのに、実にかわいそうだ。今回取り上げるのは、まさにこの資格詐称が民事訴訟に発展した例だ。

 概要を説明しよう。原告は2015年に設立された不動産会社で、18年4月ごろから戸建て注文住宅の事業に参入した。会社では、役員の1人が1級建築士資格を持っていたものの、この役員はもともと大規模非住宅を得意分野としていたので、会社は住宅の設計から施工までに精通した1級建築士を募集することにした。

 18年10月ごろ、原告会社で当時役員を務めていたA氏の紹介により、1人の候補者が見つかった。この人物が本件の被告だ。「建築業に関しては40年近い業務経験がある」と自称していた。A氏が経営陣に「1級建築士だ」と紹介した際、被告は特に訂正しなかった。雇い入れはトントン拍子に進んだ模様だ。