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新型コロナ対策の原則「密閉・密集・密接」を避けるには、余裕のある工期設定が欠かせない。では工期延長で生じた損害は誰が負担するのだろうか。柴田亮子弁護士の寄稿として契約の考え方を整理する。(日経アーキテクチュア)

 政府の緊急事態宣言が解除されたものの、当面はまだ、慎重な企業運営が求められている。今後、現場で感染者が発生した場合、具体的にはどんな対応を取るべきだろうか。

 従事者が医療機関で「新型コロナ陽性」と診断されたと会社に報告があった際を仮定しよう。この従事者と身近な同僚が「濃厚接触者」に当たるかなど、状況を把握する必要がある。

 この際、発注者へも速やかに状況を報告する必要がある。ここで問題となるのが工事期間だ。自宅待機者が増えれば、事前計画の通りに工事を進められない可能性が出る〔写真1〕。

〔写真1〕第2波、第3波に備えを
〔写真1〕第2波、第3波に備えを
4月15日から工事を一時中断した清水建設の建設現場。同社は5月6日、工事再開の方針を発表した。懸念される新型コロナ第2波で混乱を避けられるかが問われる。写真はイメージ(写真:日経アーキテクチュア)
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今回の事態は「不可抗力」

 国土交通省は2020年4月8日、こうした状況に関して民間発注者団体などへの事務連絡として、解釈を示した。「受発注者の故意または過失により施工できなくなる場合を除き、建設工事標準請負契約約款における『不可抗力』に該当すると考えられる。この場合、受注者は発注者に対し、工期延長を請求できるとともに、増加する費用については受発注者が協議をして決めることとされている」というものだ。

 これは民間建設工事標準請負約款30条(工事または工期の変更など)、31条(請負代金額の変更)を念頭に置いたものと考えられる。同約款20条(施工一般の損害)には「工事で生じた損害は受注者の負担とし、工期は延長しない」とあるが、資機材などが調達できない場合も「受注者の責めによらない事由」に当たるとしたのが通知のポイントだ。

 具体的には個別に契約書を確認する必要があるが、受発注者で「協議をして決める」ことになるため、工期延長を合意できた場合、その旨の合意書を作成しておくことを勧めたい。今後の推移が予想できない状況では、完成日について「建築工事が再開できる状況になり次第、甲乙協議の上決定する」とし、日程を未確定な状態とするのも有効な手段だ。

 工期延長が合意できなかった場合、交渉経緯を議事録などに残すことで、万が一の建築紛争に備えておく必要もあろう。