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新型コロナウイルス感染症の対策に際し、心に留めたいことがある。罹患(りかん)した人物のプライバシー保護だ。建築・住宅分野を専門とする秋野卓生弁護士は、「本人同意がない限り匿名公表とすべきだ」と強調する。(日経アーキテクチュア)

都心の大型再開発事業の現場。写真はイメージ(写真:日経アーキテクチュア)
都心の大型再開発事業の現場。写真はイメージ(写真:日経アーキテクチュア)
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 建設会社や設計事務所の従業員、現場作業者などが新型コロナウイルス感染症にかかった──。この対応で忘れてはならないのが、2005年に施行され、年を追うごとに厳しくなっている個人情報保護法の順守だ。

 個人情報保護法がいう「個人情報」とは、「生存する個人に関する情報で、氏名や生年月日などによって特定個人を識別可能なもの」を指す。

 中でも扱いに特に注意を要する「要配慮個人情報」には別の規定がある。「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取り扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報」(同法2条3項)というものだ。

 ある人物が新型コロナウイルス感染症に罹患した、PCR検査で陽性の結果が出たといった情報は、この要配慮個人情報に該当する。

 要配慮個人情報には取得の段階から制限がある。企業など個人情報取扱事業者は、法令に基づく場合など一定の例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで要配慮個人情報を取得してはならない。

 筆者が代表を務める弁護士事務所では、「社内で感染者が発生した際、社内外の接触者に感染者の氏名を公表してよいか」という法律相談を受けることもある。この場合、同意を得ていなければ氏名の公表は差し控えるべきだと回答しているところだ。

 なお、従業員などの家族が感染した場合、その情報は従業員自身の要配慮個人情報には該当しない。しかし家族のうち誰かが特定できる場合、その家族本人の要配慮個人情報に当たる。従って個人情報を取得し、公表する場合には、事前に家族本人の同意を得る必要がある。