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作業者が重い後遺症を負った転落事故を巡り、元請け会社を含む複数の施工者に安全配慮義務違反が認定された。高所作業の安全水準について、裁判所が厳しい判断を下した判決を解説する。(日経アーキテクチュア)

高く育った樹木の剪定(せんてい)作業中、作業者の1人が転落する事故が発生した。1審の東京地方裁判所は直接の使用者(雇用者)である2次下請けの専門会社の安全配慮義務違反を認定したものの、元請け会社などの責任は否定した。2審ではこの判断が覆った
高く育った樹木の剪定(せんてい)作業中、作業者の1人が転落する事故が発生した。1審の東京地方裁判所は直接の使用者(雇用者)である2次下請けの専門会社の安全配慮義務違反を認定したものの、元請け会社などの責任は否定した。2審ではこの判断が覆った

 一定以上の高所作業ではフルハーネス型墜落制止用器具の使用が義務付けられるなど、建設現場では安全確保の要請が厳しさを増している。今回取り上げる事案は、安全帯が「二丁掛け」(1つの安全帯に2つのフックなどを備えた状態)となっていなかったことについて、裁判所が「労働安全衛生規則に反した違法行為があった」と断じたものだ。

 概要を説明しよう〔図1〕。問題となった転落事故が起こったのは2013年1月10日。都市再生機構(UR)が実施した、住宅団地における樹木の剪定(せんてい)作業でのことだ。原告(控訴人)の被害者はURが発注した「植物管理工事」において、二次下請けの専門工事会社A社の従業員として作業に加わっていた。

〔図1〕冬場の樹木剪定中に転落事故発生
〔図1〕冬場の樹木剪定中に転落事故発生
事件の概要。大型住宅団地の樹木剪定中に転落事故が起こった。争点となったのは作業方法や元請けなどの監督責任だ(資料:判決文を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 原告は高く育ったケヤキの木の剪定中に、約5.2mの高さから転落。手足が動かない四肢体幹機能障害という重度の後遺症を負った。原告は、この労災について「危険作業を強いられた」などと主張。約1億6000万円の一時金など賠償を求めて元請け会社、一次下請け会社、自身の勤務先だったA社とその代表者を相手取り、東京地方裁判所に提訴した。

 東京地裁は16年9月12日、A社とA社代表者に安全配慮義務違反があったと認定し、一時金約9000万円や、毎月の介護費用などの支払いを命じる1審判決を下した。一方で元請けや1次下請けの責任は否定した。原告はそれを不服として東京高等裁判所へ控訴した。今回取り上げるのはこの2審判決だ。