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建築界の「ウィズコロナ」はどうあるべきか。建築・住宅分野を専門とする秋野卓生弁護士は「第1波で得られた知見を活かし、契約書を見直すべきだ」と説く。2回にわたり、見直しのポイントを解説する。(日経アーキテクチュア)

工事現場では「感染症予防」をどう織り込むかが新たな課題として浮かび上がっている。写真はイメージ(写真:池谷 和浩)
工事現場では「感染症予防」をどう織り込むかが新たな課題として浮かび上がっている。写真はイメージ(写真:池谷 和浩)
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 新型コロナウイルスの感染拡大では、多くの建設会社や住宅会社がこれまで想定していなかった事態への対応を余儀なくされた。新型コロナ回避のため、やむを得ず工期変更する、あるいは工事を一時中止するといった事態だ。

 緊急事態宣言下において、工事を止めるという判断は重かった。「当社から工事中止を提案すると、後に損害賠償請求を受けてしまうのではないか?」という不安から、筆者へ法律相談が寄せられたものもあった。

 現在、多くの専門家が「秋以降に新型コロナ第2波がやってくる」と予測している。大正時代に起こったスペイン風邪の流行時は、第2波が第1波よりずっと大きな波となって長く続き、かつ毒性の強いウイルスに変異していたと聞く。この第2波が来る前に、建築界でも従前の契約約款では対処できなかった条項を改訂し、万全の体制で臨む必要がある。

工事発注者の不安を解消する

 現在進行中の工事において、多くの発注者は「工事現場で集団感染(クラスター)が発生する不安」を抱えている。筆者が受けた法律相談の中でも、校舎の建設工事を発注している学校法人から「感染症拡大を防ぐために学校を閉鎖して生徒も学校に通わせていないのに、現場に多くの工事作業員が入場していて、とても不安だ」というものがあった。こうした不安に応えるには、新たな約款条項が必要だ。

 国土交通省は2020年5月14日、「建設業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を発表した。契約見直しの第一歩は、このガイドラインの順守を契約における受発注者双方の義務とすることだ。設計・工事監理業務委託契約、工事請負契約ともに有効な手段だ。例として、工事請負契約への追加条項を考案した〔図1〕。

〔図1〕発注者を安心させる条項が必要
〔図1〕発注者を安心させる条項が必要
契約条項見直しの例。上は、国土交通省のガイドラインを共通認識とすることを契約に明記したもの。下は発注者の感染拡大防止を理由とした発注者中止権を加えたり、工期見直しのリスクを受発注者の双方負担としたりするもの(資料:匠総合法律事務所の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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