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何が不法行為となるのか

 反対運動を巡る争いは絶えない。例えば反対住民側がミニコミ誌やインターネットの掲示板に「危険を招くマンション計画」など書き連ねた事件(横浜地方裁判所03年9月24日判決)がある。判決は「通常の読み手はこれらを意見表明と受け取る」と判断。名誉毀損行為に該当せず、違法性の有無に踏み込むまでもないとして、事業者側の請求を棄却している。

 一方、事業者側の請求を認めた例もある。反対住民側が看板やビラなどで「悪徳業者は営業停止を」「悪徳業者関係者は立ち入りお断り」といった表現を使ったケースだ(東京高等裁判所1985年3月26日判決)。判決は「事業者側に『悪徳業者』と非難されるような行為がない限り、違法」として損害賠償請求を認めた。

 反対訴訟で勝訴した住民側が「不当訴訟勝利ご支援に感謝」などと記した垂れ幕を設置、再び裁判となった例もある(東京高裁94年3月23日判決)。判決は反対住民に垂れ幕の撤去を命じた。読み手に「事業者側が不当な訴訟を行った」という印象を抱かせたことを違法だとした。

 このように、反対住民が掲げた横断幕などが名誉毀損行為に相当し、かつ不法行為となるかはケース・バイ・ケースと考える。事業者が裁判で掲示物の撤去を請求したとしても、望みがかなえられるとは限らない。

講師:柴田 亮子(しばた りょうこ)
講師:柴田 亮子(しばた りょうこ) 東京工業大学卒業。日本電気、キーストーン法律事務所を経て、2020年10月から伊東・早稲本法律事務所で執務を行う。建築紛争、マンション問題、離婚・相続を得意分野としている