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2項道路にも接道する敷地で賃貸マンションが完成した。道路所有者がマンション居住者などの2項道路の通行禁止を求める裁判に発展したトラブルから、私道の通行権について改めて考察する。(日経アーキテクチュア)

通称「2項道路」と呼ばれる建築基準法42条2項に基づく指定を受けた私道の所有者が、沿道に賃貸マンションを完成させた事業者を訴えた。そもそも事業者には通行権がない上、不特定多数の往来により生活上の安全が脅かされるとして、賃貸マンション関係者の通行禁止を求めるというものだ
通称「2項道路」と呼ばれる建築基準法42条2項に基づく指定を受けた私道の所有者が、沿道に賃貸マンションを完成させた事業者を訴えた。そもそも事業者には通行権がない上、不特定多数の往来により生活上の安全が脅かされるとして、賃貸マンション関係者の通行禁止を求めるというものだ
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 今回取り上げるのは、建築基準法42条2項道路に指定された私道の所有者(原告)が、この私道に接した敷地に賃貸マンションを建設した事業者に対し、居住者などの通行禁止を求めた裁判の1審判決だ。

 概要を見ていこう。2015年12月、事業者は建設に先立ち、近隣住民に計画を通知、何度か説明会を実施した。だが、私道所有者の納得は得られなかった。翌16年7月、4人の私道所有者が事業者を相手取り、通行禁止を求めて東京地方裁判所へ提訴した。17年3月にマンションは完成したが、その後も裁判は続いた。

 問題の私道は東京都渋谷区にある。長さ55.8m、幅4mで、自動車同士がすれ違うのは難しい道路だ。

 賃貸マンションは地上8階建て、全31戸。中野通り(都道420号鮫洲大山線)と、この私道に接道する敷地で計画された。私道所有者の要望に応じ、私道へ引っ越し用トラックや宅配事業者の車両が進入することがないよう、エントランス付近に駐車スペースを設けていた。

 私道は中野通りにつながっていなかったが、マンションの駐車スペースにより、中野通りから自動車が私道へ通り抜けられるようになり、渋滞時の抜け道として不特定多数の自動車が頻繁に往来する懸念が生まれた。

 原告はこれらについて「事業者側は私道を所有していないので通行権がない」「従前、想定していなかった騒音、振動などの環境変化により安全や居住の安寧が害される。私道の損耗や破損の恐れを格段に高め、維持管理の責任を著しく加重され、私道所有者としての受忍限度を超えている。所有権の直接的な侵害だ」と主張した。

 事業者側は「私道は建基法42条2項による『みなし道路』。近隣住民の通行の用に供されるべきもの」などと反論、全面的に争った。