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一時、住宅業界で大問題となった「省令準耐火構造」の施工ミスを巡り、設計・施工者(住宅会社)の不法行為責任を否定した判決が2021年6月に下った。一連の問題に関する初の判決とみられる。(日経アーキテクチュア)

国土交通省が事態を公表、後に全国で続々と発覚して住宅業界を一時騒然とさせた「省令準耐火構造」の施工ミス問題で、住宅会社が建て主から訴えられた。建て主は「容易に発見できない部位なのをいいことに、意図的にあるいは重大な過失で生じさせたもの」と主張、住宅会社には不法行為責任があると追及した
国土交通省が事態を公表、後に全国で続々と発覚して住宅業界を一時騒然とさせた「省令準耐火構造」の施工ミス問題で、住宅会社が建て主から訴えられた。建て主は「容易に発見できない部位なのをいいことに、意図的にあるいは重大な過失で生じさせたもの」と主張、住宅会社には不法行為責任があると追及した

 住宅会社の施工ミスにより、省令準耐火構造の基準を満たさない木造戸建て住宅が数百棟に達する規模で相次ぎ発覚した。2010年ごろのことだ。こうした施工ミスはその後、全国で続々と発覚、顧客トラブルにも発展した。今回取り上げるのは、この施工ミスの責任が争われた裁判の1つだ。筆者が代表を務める匠総合法律事務所が、住宅会社側の弁護を担当した。

 裁判では、建築行為において不法行為に該当する瑕疵(かし)とは何か、法解釈を巡って激論が交わされた。この争点に絞って解説したい。

 概要を説明しよう。原告は注文住宅の建て主で、被告の住宅会社に木造軸組み工法の戸建て住宅を発注した。締結した建築工事請負契約には、住宅を「省令準耐火構造」に適合させる旨が合意されていた。住宅は契約締結から3カ月後に完成し、建て主に引き渡された。請負代金は約1770万円だ。

 この後、この住宅会社が手掛けた複数の引き渡し済み住宅で省令準耐火構造に反する施工が行われていたことが発覚。住宅会社の報告を受けた国土交通省が公表に踏み切った。原告は、施工ミスが生じた住宅の所有者の1人だ〔図1〕。

〔図1〕住宅が完成した年に問題発覚
2011年11月 建て主(原告)と住宅会社(被告)が建築工事請負契約を締結。建て主が所有する敷地に木造軸組み工法の2階建て戸建て住宅を建築する内容で、工事代金は約1770万円。建物を省令準耐火構造とすることが合意されていた
2012年2月末 戸建て住宅が完成、被告は原告に建物を引き渡した
2012年内 全国で省令準耐火構造に関する施工ミスが発覚。国土交通省が事態を公表した
2017年7月 原告が本件建物について埼玉住宅紛争審査会の特別住宅処理の調停を申し立て
2018年 原告が調停申し立てを取り下げ、さいたま地方裁判所に訴えを提起
2021年6月25日 さいたま地裁が被告に補修費など約89万円の支払いを命じる判決を下す
事件の概要。引き渡しされた年に省令準耐火構造の施工ミスが発覚、被告は原告の住宅に関する補修を申し出ていたが拒否され、水面下で紛争が続いていた(資料:判決文を基に日経アーキテクチュアが作成)

 事態発覚から約2年後、原告はさいたま地方裁判所に訴訟を提起した。原告側は(1)住宅には契約で合意した耐火構造となっていないなどの瑕疵があり、被告側は補修を約束したのに履行していない、(2)住宅には「建物の基本的な安全性を損なう瑕疵」があるので被告は不法行為責任を負う、と主張。内装の不備なども含む12の瑕疵を指摘して、補修費など計約1400万円の損害賠償を請求した。