建築と著作権を巡って、新たな判決が下った。「応用美術」の考え方に照らして、著作権法の保護を受けるための要件を明示したものだ。著作権法の保護を得るハードルの高さが、改めて浮き彫りになった。(日経アーキテクチュア)

建築界では、設計者のアイデアが詰まった建築物は「著作物」であって、著作権法の保護対象に当たるはずだ、という考え方が根強い。著作権法10条1項5号は「建築の著作権」を明記しており、同様に図面には「図形の著作権」(同6号)という定義がある。これらが期待の源泉だ。
一方、建築界において実際にこの権利が認められ、さらに行使が可能となった例は非常に少ない。今回取り上げる判決は公園に設置された滑り台遊具のデザインを巡るもので、土地に据え付けられた構造物の著作権という点では、建築物における裁判と同様の様相を呈した。
概要を説明しよう。問題となったのはタコの形状を模したコンクリート造の滑り台遊具。原告は公園の施設や構造物などの設計・施工を手掛けるデザイン会社で、前身会社を含めると多数の実績を持っていた。
被告は原告会社から独立した人物が設立したデザイン会社だ。被告は2011年から15年にかけ、2カ所でタコの滑り台を設計・施工し、原告と紛争になった〔写真1〕。